クローディア誘拐の翌日、学校が終わると、平日にもかかわらずレヴィンは、集会所に来ていた。
マルムス教の教徒達が「めずらしいねぇ」と声をかけてくる中、レヴィンはクィンシーを探す。
アマンダは見つけたのだが、クィンシーは見つからない。
ここではなくて、秘密の隠し扉のある路地か?と思ったのだが、あちらへ行っても入れてもらえるはずもないと思い、しばらく何をするでもなく、集会所で待ってみる事にした。
もうすぐ夜の炊き出しが行われるようで、夕食の準備が始まっていた。
そんな中、有り得ない人物に話しかけられた。司祭のニコライである。
彼は、聖ニコライ様と呼ばれ、祈りの時間と懺悔の時間に救いの言葉をかけるくらいしか、信者に声をかけない。
この王都では、少なくとも表の教団のトップであると思われた。
「あなたは、随分と活動に熱心だ。懺悔にも慈善活動にも積極的に取り組んでいる」
「あ、ありがとうございます」
戸惑うレヴィンに、緊張していると勘違いしたのか、にこやかな笑みを浮かべて言った。
「緊張せずとも良い。我等には階級など関係ないのだから」
この言葉から察するに、別にレヴィンが貴族であるとバレた訳ではなさそうだ。
どう返そうか迷っていると、ニコライは先を続ける。
「マルムス教にもっと深く、関わってみる気はないかね? 君の将来のためにもなるだろう」
「本当ですか!?」
「うむ。我々は階級を失くすために、革命を持って民を導こうとしておる。そんな我々には力が必要なのだ。体制と戦う力が……」
「願ってもない事です。僕は何をすれば良いのでしょうか?」
レヴィンは喜びを満面に表現してアピールする。
「この組織には革命軍という武闘派集団が存在しておる。君にはそこに入って体制に押しつぶされようとしている弱者を救済するために戦ってもらいたいのだ」
「そんな組織が……。もしかしてクィンシーもそうなのでしょうか?」
「クィンシーか、彼の事も知っていたのかね。彼もまた導かれし闘士なのだ」
やはりクィンシーも裏組織の一員のようだ。
「秘密集会は、毎週行われておる。ローズマダー様の加護を得るために、メルクの日の深夜零時から、別の場所でな」
「ニコライ様、レヴィン」
話の途中で、後ろから声がかかった。クィンシーである。
「あッ! お話中、失礼しました」
思わず声をかけたが、ニコライとの会話を遮って不敬だと思ったという感じだろう。
「何。構わんよ。クィンシーよ、レヴィンにもその時が来たようだ。秘密集会に連れて行ってあげなさい」
「本当ですか! よかったな、レヴィン! これで本当に教団の一員になれたぞ!」
ニコライは、ふふふと小さく笑うと二人に背を向けて、去って行った。
「クィンシー、探したぞ? 昨日の事を聞こうと思ってな」
「ああ、すまんな。娘は捕えてある。あの路地の隠し部屋でな」
「どんな状態なんだ?」
「一応、未来の金づるだからな。洗脳するために、丁重にもてなしている。見張りがついている以外、割と自由だよ。今は、教団の本を読ませているところだ」
その答えにレヴィンは心底ホッとしていた。
少なくとも手荒には扱われていないのだ。
しかし、それを気取られないように話を続けるレヴィン。
「そうか、それで、秘密集会ってのはどこでやるんだ?」
「それは楽しみにしてろよ。次のメルクの日の十八時に西門に集合な。遅れんなよ?」
そう言うと、クィンシーは口の端を歪めてニヤリと笑った。
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