もう何日目だろうか?
アンデッドの討伐と生存者の保護を繰り返す毎日が続いている。
食糧の輸送隊も到着し、ギルド内は割と平穏だ。
オットマーの鑑定により、ギルド内には怪しい職業の人間は見つからなかった。
レヴィンは、神殿や城塞内の様子はどうなのだろうと心配になってしまう。
殺伐としているかも知れない。
相変わらず、至る所にアンデッドが出没するため、大元の出現ポイントは絞り込めていない。
一向に解決への道筋が見えず、事件に立ち向かっている冒険者の中にもかなりの疲れの色が見え始めていた。
長い冒険者では、既に五か月近くこの街に滞在している者もいるのだ。
フェリクスのパーティが帰ってきたので、軽く情報を聞く。
今日も生存者は見当たらなかったそうだ。
「もう生存者はほとんどいないのかもな……」と口にして去っていくフェリクス。
これだけの量のアンデッドだ。確かにそれは有り得る話である。
そんな中、一日を終えて冒険者が続々と帰還してくる中、マチューのパーティだけが帰ってこないとの報告がなされる。
既に夜の帳が下りており、魔導具による街灯しかない外はその大部分を暗闇が支配していた。
しかし、放っておく訳にもいかず、三つのパーティを一組とした捜索隊が組織された。
レヴィンとダライアスも捜索隊に加わっている。
マチューのパーティが担当していた区域に足を踏み入れる一行。
相変わらず、アンデッドの集団がうろうろしている。
マチューは黒魔導士であったが、もしアンデッド化していたとしても、通常の腐った死体などのアンデッドと同じであるので脅威はないはずだ。魔法や特殊踏力を使うアンデッドは珍しいらしいのだ。
雑魚を火炎球で燃やし尽くしながら周辺を捜索していく。
すると、アンデッドの群れの中から、何発もの魔力弾が飛んできた。
それは雑魚アンデッドを巻き込みながらも、確実にこちらを狙っていた。
レヴィンはまた上位アンデッドかと舌打ちをしつつ、光球をまき散らしながら魔力弾を放った敵の姿を探す。
そして一緒に探していた冒険者の仲間から声があがる。
「マチュー! いたぞッ! 敵に囲まれてるッ!」
彼は発見した方向を指差していた。
そこに目をやると確かに雑魚アンデッドに囲まれたマチューらしき人物の姿が見え隠れしている。
しかし、マチューが右手をこちらに向けると、魔力弾を放って来た。
明らかにこちらを狙っている。
まさかッ……と、最悪の展開が脳裏をよぎる。
マチューはレヴィン達の前まで来ると言葉を発した。
「俺は力を手に入れた……気持ちいいぞう。お前らもこちら側に来ないか?」
ぬらりとした口調で語りかけてくるマチューだったもの。
その言葉でその場にいた全員が理解した。
マチューはもうマチューではなくなっている事に。
「火炎球」
ノベルガの先制攻撃がマチューに肉薄する。
しかし、それはマチューが展開した魔力障壁に阻まれてしまう。
「お前らも行けッ!」
マチューの言葉に、一斉に動き出すものがいた。
それらは紛れもなく彼のパーティメンバーだったものであった。
そう、彼等は全員、アンデッド化されていたのだ。
各所で戦闘が始まった。
ダライアスは、かつて騎士だった男と剣を交えている。
レヴィンも迫り来る剣士だった男の剣技をかろうじてかわすと魔法を発動する。
「轟火撃」
するとその剣士は素早いステップで軽快にかわすと、レヴィンに突っ込んでくる。
速いッ!
足技で剣士をよろめかせるが、なおも無理な体勢から横薙ぎの剣を繰り出してくる。
かわしきれない一撃だったが、威力が乗っていなかったのだろう。
竜皮の鎧に阻まれダメージを受ける事はなかった。
そこへ至近距離からレヴィンの魔法が決まる。
「神霊烈閃」
体の中心にまともにくらった剣士はビクンと体を震わせると、膝から崩れ落ちた。
(くそッ! 素早いアンデッドって反則だよな……)
剣士を倒したレヴィンはその足をマチューの方へと向ける。
「空破斬」
試しに放った風の魔法だったが、魔力障壁により吹き散らされる。
思ったより障壁が固い!
レヴィンはすぐに他の魔法を使用する。
「神霊烈閃」
流石にこれを受ける気はなかったか、大きく後方に飛ぶマチュー。
おそらく、死霊術士の能力『アンデッド化』を使用されたのだろうが、これは元の能力を上昇させる効果もあるのだろうかと疑問が頭をよぎる。
「火炎球」
マチューが魔法を発動させる。
アンデッド化しても魔法も使えると……頭の中にメモしておくレヴィン。
最早、敵も味方も関係ないようだ。
雑魚アンデッドも平気で巻き込んでいる。
味方の騎士、カノンが火炎に巻き込まれている。
暴れ狂うカノン。
「創造湧水」
白魔法で、大きな水球を魔力で造りだしカノンにぶっかける。
しかしそう簡単には消えてくれない。
再び、魔法を使用して何とか体に纏っていた炎は鎮火する。
続けざまに回復魔法をかけ、何とか間に合ったようでカノンは立ち上がり、こちらへ手を挙げる。
その時、視界が揺れた。
マチューの放った魔力弾が飛んできてレヴィンはまともにくらって吹っ飛ばされたのだ。
(痛てぇ!)
すかさず群がってくる死体達。
「地精波紋」
波紋が同心円状に広がり、周囲の死体が土の錐で刺し貫かれる。
その隙に脱出し、周囲に目をやると、味方の多くが傷つき倒れているのが見えた。
ダライアスは騎士を倒し、別の戦士と戦っている。
このままではジリ貧である。
倒れている味方に回復魔法をかけつつ、ノベルガに進言する。
「このままじゃヤバイッ! 撤退しよう!」
他の味方も余裕がなかったのだろう。
浮足立っていたところへ緊張の糸が切れたようだ。
我先にと撤退を開始する。
「爆撃風」
魔法で撤退路を確保するレヴィン。
ダライアスも撤退を開始する。
こうして、マチューの捜索作戦は多くの被害を出して終了した。
肝心のマチュー自身がアンデッドになっていたのだ。
その事もギルド内に大きな衝撃を与える事となった。
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