ようやく、王都へと帰還すると、レヴィンは誘拐事件解決と『南斗旅団』壊滅の功績により、男爵の爵位とカルマ東の統治権を与えられた。
学校へ行かなければならないので、すぐに赴任する事はできない。
王国で開拓民などを集めてくれるようだ。
マッカーシー卿も協力してくれるとの事である。
「領地をもらったッ!?」
家に帰って報告すると、グレンはとても信じられないといった表情でそう述べた。
「うん。エクス公国で『南斗旅団』って野盗集団を壊滅させた功績でって言ってたよ。まさか封土までもらえるとは思ってなかったよ」
「でも、本当に貴族になるなんてねぇ……」
リリナも遠い目をしてそうつぶやく。
「しかしお前に統治なんてできるのか?」
「いやぁ、解んないね」
「レヴィンは昔から本好きだったから大丈夫よ」
リリナは、楽観視しているようだ。本好きは下剋上なのよとかつぶやいている。
レヴィンは「いや俺は内政チートじゃないから」と心の中で思っていた。
「マッカーシー卿も人材を派遣してくれるって言ってたし。でも学校があるから、代官置かなきゃいけないんだよね」
代官の事を考えていたレヴィンだったが、すぐに別の考えが頭をよぎる。
「あッいきなり税収なんて見込めないだろうから当分、代官は必要ないかな?」
「学校の貴族仲間はどうやって領地を治めているんだ?」
「いや、学校にいるのは貴族の子弟であって貴族の領主ではないから」
「とにかく学校にいる貴族様とコネクションを作っておきなさいよ?」
確かにコネクションは必要そうだ。
将来の腹心とかにも出会えるかも知れないし。
「ところでマッカーシー卿と言うのは、どんな人物なんだ? 信頼できるのか?」
「流石、貴族って感じかな。腹に一物ありそうだけど信用できそうだよ。僕の事も評価してくれたしね」
レヴィンはうーむと腕組みをしながら話を続ける。
「名前は、確か……、クライヴ・フォン・マッカーシー侯爵で、息子のベネディクトが同級生で妹にクラリスがいるな」
領地は王都南西のプラト高原にある、マッカスの街を領都とし、広大なアニマ森林地帯を領有している。
林業と農業を基盤に、魔導具や機械の開発に力を入れており、新しいもの好きな領主として領民からも人気がある。
レヴィンが話終わったのを見計らって、リリナが激励の言葉をかけてくれる。
「まぁ、とりあえず、おめでとうレヴィン。大変だろうけど頑張りなさい」
「そうだな。まずはおめでとうだったな。なんでも相談に乗るからな?」
グレンもリリナに続く。
「ありがとう。やれるだけやってみるよ」
「ああそう言えば、開拓民を募集するのなら、あなたの友達、あら何ていう名前だったかしら……」
「ダライアスの事? 確かにあいつは今、家の農業の手伝いをしているし、誘ってみるのもいいかも知れないね」
「あたしも知り合いに聞いてみるわ」
「おッいいかもな。俺も聞いてみるか」
その時、リリスがグズり始めた。
その声はすぐに大きくなり、リリナが慌ててあやしに向かう。
昔から図書館によく通っていたが、領地経営や経済などの本には全く手をつけなかったレヴィンである。
常に魔法の事ばかり考えていたツケが回ってきたのかも知れない。
まぁ誰も貴族になるなんて未来予想図は描けるはずもないのだが。
ともあれ、家族に簡単な説明をするレヴィンであった。
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