まったりとした午前中を過ごしたレヴィン達は、装備を揃えるために午後から外出した。
まず目指すは武器屋である。
立ち寄った先は、結構大きな店構えをしている。
以前、来た店とは違うような気がするレヴィンであった。
武器屋でも複数の店舗があるのかも知れない。
色々見てみるが、やはり武器の良し悪しは区別がつけづらい。
やはり、鑑定士の能力を早く取るべきだろうか?
今は大魔導士になるために、時魔導士になっているのである。
ダライアスとヴァイスも品を手に取り、手のなじみ具合や、重量などを思い思いに確認している。
レヴィンはよく解らないので店の店主らしき男にお勧めを聞いてみた。
「剣か大剣、騎士剣でお勧めってありますか?」
「あん? 兄ちゃん、その格好は魔導士じゃねぇのかい?」
「そうなんですけど、お願いします」
「解ったよ。ちょっと待ってな」
そう言うと男は店の奥へと引っ込んでいった。
その間に隣りに来ていたベネディクトに話しかける。
「ベネディクトの武器ってなんなん?」
「エンハンスソードだよ。魔力と力の能力向上効果があるんだ。秘蔵の剣さ」
攻撃力が数値化されていない世界なので、どれほどの強さなのか解らない。
しばらく待っていると、奥から男が戻ってくる。
「これなんてどうだ」
持って来たのは三振りの剣であった。
一つずつ詳細情報を教えてくれる男。
「これは、ソードオブグローリー。騎士剣だ。その兄ちゃんが手にしている、ディフェンダーよりも業物だぜ。値段は大金貨五枚な」
ヴァイスの方を顎で指しながら言う。そして、次の剣を手に取る。
「これは、ヴァルガンダス。片手剣だな。モンテールの地下迷宮から出たって話だ。俺が直接仕入れてきた。魔力が込められていて、魔族だってぶった斬っちまう代物だ。白金貨二枚だ。」
「最後のこれは、クルツガルヴァ。大剣だな。属性が神聖の攻撃が可能だ。大金貨三枚だな」
ダライアスとヴァイスも話を聞きに、カウンターの方に寄ってきていた。
「なんか気に入ったのあった?」
レヴィンは近づいてきていた二人に尋ねる。
「俺はディフェンダーにしようかと思ってたけど、そのソードオブグローリーにしようかな」
ヴァイスはその騎士剣を見て目を輝かせている。
二人とも実際手に取ってみて感触を確かめてる。
「俺は迷ってるな。そのヴァルガンダスがいいけど、俺には高過ぎる」
「じゃあ、他の武器屋も見てから決めるか?」
そう提案すると、二人共同意したので、店の男に礼を言って店から出た。
一応、買うかも知れない旨は伝えておいた。
次の武器屋に入店する。
こちらは先程の店より狭く雑然とした感じである。
店内を見て回ると、先程の店と同じ剣が多い。量産品のようだ。
しばらく見て、めぼしいものが見つからなかったので、この店でも店主のお勧めを持ってきてもらう事にした。
「これだな。刃の部分にアダマンタイトを使用した、アダマンソードだね。値段はオマケして白金貨二十枚でどうかな?」
高過ぎて手が出ないが、一応試してみるように三人に促す。
それぞれ確認するが表情はさえない。特に気に入らなかったようだ。
それ以前に高くて買えないのだが……。
一応お礼を言って店を出ると、最初の店に戻ってきた。
「おう。また来たのか」
戻ってきたので買ってもらえると思ったのか表情が柔らかい。
「さっきのソードオブグローリーをください」
ヴァイスが開口一番そう言った。
「あいよッ! 毎度有り!」
「僕はヴァルガンダスとミスリルナイフでお願いします」
「む? 兄ちゃんが持つのか?」
レヴィンがそう言ったので、疑問を持ったようだ。
「はい。そうです」
「そうかい。お勧めを二本買ってくれたんだし、ミスリルナイフはタダにしとくぜ」
納得したのか、オマケまでしてくれる店主であった。良い人である。
贔屓にしたろうと、心の中で決めるレヴィンである。
「ありがとうございます!」
ダライアスは買わないようだ。
レヴィンの方をチラチラ見てくるので、店を出て話を聞こうと思った。
店から出ると、早速、ダライアスが話しかけてきた。
「レヴィン、すまないが、宿屋で見せてもらった剣がどうしても頭から離れないんだッ! 売ってくれないか?」
あれか。確かに彼は気に入っているようなそぶりを見せていたなと、レヴィンは思う。
「うん。解ったよ。オマケしてタダだッ! どうだい?」
「どうだいって……譲ってくれるという事か!? いいのか?」
「俺も気に入ってたんだけど、ダライアスがそう言うなら別にいいさ」
「ありがとう! 恩に着るよ!」
ダライアスは満面の笑みを浮かべてそう言った。
「名前が解らないからな……そうだ! 刀身が空のように青いから蒼天の剣と名付けよう!」
早速名前まで付けるダライアスであった。
まぁ十三歳だからしょうがないよね……レヴィンはそう思った。
「じゃあ次は魔導屋に行こうか」
杖のアイコンを探す。杖の絵が板に彫られている看板を掲げている店が魔導屋である。
ほどなくして、アリシアがお店を見つける。
入ってみると、様々なロッドや杖が置かれていた。
どうやら先客がいるようだ。店員が対応している。
アリシアとシーンがきゃあきゃあ言いながら品物を物色している。
「これ、かわいー」
ロッドに可愛さを求めるな。
「ただの棒……」
レヴィンも見て回る。
ロッドや杖は、敵を殴る事を目的としている訳じゃないから、やっぱり付加効果だな、とレヴィンは他の店員に効果を尋ねている。
「なんか地下迷宮とかで発見されたようなレア装備はありませんか?」
「うーん。どうしてもロッド系は量産品になっちゃうわねぇ。アルヴァ教国の方に行けばレアな物もあるんでしょうけど……」
神聖アルヴァ教国は聖地があるとされる国家で特殊な魔導具があったり、魔法研究が進んでいたりするらしい。
また、多くの英雄や神殿関係者を輩出しているという。
「アリシア、このルーンロッドがいいんじゃないか?」
「え? この可愛いやつ? じゃあこれにするよッ!」
どこが可愛いのか解らなかったが、レヴィンの言う通り、ルーンロッドを購入するようだ。
シーンは、悟りの杖か妖精の杖かで迷っているようだ。
「シーンは回復魔法の効果が高いから、魔力は高いと思う。だから、神聖魔法と白魔法強化の効果がある悟りの杖の方がいいんじゃないかな?」
レヴィンのアドバイスに納得するシーン。
二人は、店長らしき婆ちゃんが座っているカウンターへと持って行く。
無事、ロッドと杖を買えたようだ。
以前の装備は買い取ってもらう。
次は防具屋だ。
皆の装備している防具を観察する。
旅団戦でよくこの装備で戦ったなと感心する。
特にヴァイスの革の鎧はボロボロだ。
結構大きな防具屋を見つけたので入ってみる。
品揃えは豊富なようである。
それぞれが自分用の防具を見に散開した。
レヴィンは身軽さを重視するようである。エクス公国から出たお金はまだあるが、白金貨二枚の剣を買ってしまったので、あまり湯水のように使う事は避けたい。
レヴィンは、アリシアとシーンにローブやマントの下に防御力の高いものを着るように助言しておいた。
男共は勝手に好きなものを買うだろうし、放っておいた。
レヴィンは、彼等が実用性の薄い物を選ぶようなら助言しようと思っていた。
ヴァイスは、ミスリルアーマーとミルリルマントを購入した。
マントはミスリルを細い繊維状に加工したものを用いており、軽くて丈夫な逸品だ。
騎士剣に高価な物を購入したので価格は抑え気味である。
なお、レヴィンは驚いていた。ミスリルを繊維状に加工する技術にだ。
(ちょっと技術水準高過ぎない?)
レヴィンはこれは調査が必要だと心にメモしておいた。
そして次は誰の様子を見ようかと思い、周囲を見渡すレヴィン。
ダライアスは真剣に選んでいるので、そっとしておく。
ベネディクトも何やら物色している。
「何か買うのん?」
レヴィンが声をかけると、びくッとしながら答えるベネディクト。
「どうしようか迷っててさ。僕は最初、見習い戦士だったから、今の装備も割と軽装なんだよね」
「あそっか。今のはミスリルプレート?」
「ああ、そうだ。それと盾だね。バックラー」
(あれ? 見習い戦士って盾装備可能だったっけ? ヘルプ君起動、ってああ、小型の盾はほとんどの職業で装備可能なのね)
「なるほど、最終的にどこを目指すかだね」
「それによって買うべき防具が変わってくると?」
「うん。でも貴族の跡継ぎだしなぁ……騎士で良いような気がする。何か目標とかあるん?」
貴族なんだから本人が戦うような事にはならないだろうとレヴィンは思った。
「今、この時になって初めてそれと向き合っているよ」
「まだ、休みは一か月ほどあるし、すぐ決めなくてもいいんじゃないか? とりあえず鎧を買っておけばいいかと」
「そうだね。解ったよ」
レヴィンは、女子の姿を探す。
シーンは既にカウンターに並んでいた。
他の客が会計をしているようだ。
彼女の持っている物を見ると、どうやら竜皮の衣と女神のローブのようである。
女神のローブは、説明書きによると属性攻撃を軽減する効果があるそうだ。
竜皮の衣はローブの下に着るのだろう。軽くて非常に丈夫な衣である。
アリシアも決まったのか、軽装鎧とマントを持ってこっちへ近づいて来る。
「何にしたんだ?」
「これだよ~」
アリシアが持っていた物を見せてくる。
オリハルコンベストとミスリルマントだ。
結構奮発したようである。
いいんじゃないかと褒めておいたら喜んでカウンターの方へ向かって行った。
肝心な自分の装備はと言うと、あっさりと決まった。
ミスリルのローブと竜皮の軽鎧である。
金額にして、大金貨三枚と金貨八枚だ。
これからもっと稼いだら大魔導士にふさわしい装備を買う予定である。
まだ職業変更できないけど。
大魔導士にこだわっているのは単にレヴィンが格好良いと思っているからという理由だけである。
能力に『大魔法』と言うのがあり、魔法の限界を超えた、究極魔法を使用できるようになると言うのも厨二心をくすぐられる由縁だ。
ちなみに、大魔導士の後は、魔人になるつもりである。
それからしばらくして、全員が防具を購入した。
「疲れたね。何か飲んでいこ~」
アリシアの提案に、全員が同意したのであった。
カフェを探す一行であった。
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