翌日は、午前中から、港湾の視察に赴く事となった。
ドルトムット卿と共に馬車で移動する。
ドルトムットの港は、軍港であり、商港である。また、少し離れた区画には漁港もあり、漁業も盛んである。
現在も大型の船舶が多数停泊している。
レヴィンはガレー船とかガレオン船くらいの知識しかなかったのだが、説明を聞くところによれば、軍船はロレンス船と、貿易船はゼルニート船と呼ばれているようだ。
なお、レヴィンは知らない事だが、ロレンス船は比較的ガレオン船に似ており、ゼルニート船はキャラック船と同型である。
内海のナーガ海は、比較的、波が穏やかであり、それなりに水深もある。
ドルトムットと同じナーガ海に面しており、少し湾上になっているナミディアは良港になる条件は揃っているはずである。
ドルトムット港はどちらかと言うと天然の良港のようで、特に地形に手が加えられている訳でもないようだ。
この時代の技術水準では、大きく地形を変えるのは難しいようだ。
コンクリートもないので切り出した石と木材で造られた港になっている。
「いやー。これだけの巨大船の建造技術はどこからもたらされたんですか?」
「こればっかりは人間が長年に渡って建造し、改良や研究を行ってきたおかげだよ」
「なるほど。是非、我が領にも技術支援をお願いしたいです。うちも港を整備する予定なので、貿易船の寄港地になる事を願っています」
「いいでしょう。貿易の品目はお考えで?」
「魔の森も近いですし、魔物の素材などを輸出できそうです。それに特産品についても色々考えているので、その話はいずれ……」
その後、漁港を見学させてもらった。
漁船にも乗せてもらったが、小型の船が多く、遠洋漁業には向いていないようだ。
主にナーガ海で底引き網漁のような魚の取り方をしていると言う。
遠洋で漁を行うには、エクス公国とここから南西にある、グラント大陸の間にあるエクス海峡を通って外洋に出る必要があるため、行っていないらしい。
港の見学を終えて、市中を馬車の中から見学していると、広場で演説をしている者達が見受けられた。
周囲には住民が大勢詰めかけており、演説に聞き入っているようだ。
馬車は何事もなく通り過ぎようとしたので、御者に言って少し離れた場所に停車してもらう。
ドルトムット卿は、見せたくないようで、出発するように御者に命令したが、何とか留まってもらう。
「ドルトムット卿、あれは何が行われているのですか?」
演説を聞いてなんとなく解っていたのだが、敢えて聞いてみる。
しかし、ドルトムット卿は沈黙している。
「ドルトムット家の長女、フレンダは悪魔に魅入られているッ! このまま悪魔に連なる者に統治を任せておいて良いのかッ!」
「魔女は、邪法で作物の実りを減らし、疫病を蔓延させると言う! 昨年の不作も魔女の仕業であるッ!」
「魔女の誕生により、サファリスの街は滅んだ! この街もサファリスの二の舞になるぞッ!」
演説を聞いている住民達からも同意の声があがる。
周囲は喧騒に包まれていた。
「あれはフレンダ嬢とあなたを弾劾しているのではないのですか? 放っておいて良いのですかッ!?」
「……そうは言うがな……フレンダが魔女なのは事実なのだ。あれは神殿が中心になっている集会だ。中々止められんのだよ」
「魔女云々の話は信憑性などないでしょう! 魔女は、悪魔の味方なんかじゃない。むしろ悪魔にもダメージを与える事のできる『闇魔法』を扱う事ができるんですよッ!」
「!? 貴殿は、魔女の事に詳しいのかね?」
「はい。ある程度の知識は持っております。フレンダ嬢は心の優しい正しい心を持った娘です。それはあなたもよく解っているのではないのですか?」
「むむむ……しかし、魔女を異端視する風潮は、この国にも昔から根強く残っている。それに神殿の総本山がある、神聖アルヴァ教国と表だって敵対する訳にもいかんのだ……」
「諸悪の根源は神聖アルヴァ教国なんですね……」
レヴィンは苦い顔でそう言った。
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