朝になり、身の回りの世話をするためにウォルターが顔を出す。
別にいいと断るのだが、今回の旅は従者が彼だけなので、言っても聞かないのだ。
着替えを手伝ってくれたり、水を持ってきてくれたりと至れり尽くせりだ。
昨夜もマイセンの動向を見張っていたはずなので、疲れているはずなのに申し訳ないとレヴィンは思った。
そしてレヴィンの部屋には、朝食の準備ができたと伝えるために使用人が来ていた。
了承の返事をし、使用人の後について食事の部屋へと向かう。
部屋には既にドルトムット夫妻以外のメンバーが顔をそろえていた。
といっても席に着いているのは、マイセンとフレンダ、ルビーの三人だけだが。
フレンダの後ろにはオレリアが控えている。
少し待つと、ドルトムット夫妻が部屋に入ってきて席に着いた。
そして朝食が運ばれてくる。朝はプレートに様々な料理が盛られている。
皆が食べ始めて少し経った頃、レヴィンは話を切り出した。
「そう言えば、ドルトムット卿」
「うん? なんだね?」
「視察ですが、明日で切り上げて王都に戻ろうと思います」
「そうか……。ろくに案内してあげられず申し訳ない。身内の不幸にも巻き込んでしまったしな」
「いえ、お気になさらず。それで、帰る時、一緒にフレンダ嬢を連れていきたいと考えておりますが、よろしいでしょうか?」
その言葉にこの場にいる全員が反応する。
ドルトムット夫妻は、喜びを全面に表している。
マイセンは、驚き戸惑っているようだ。彼の立場ならば喜んでもよいはずなのに困惑しているのは、つまりそう言う事なのだろう。
フレンダも驚いているらしく、少し取り乱している。この場で宣言されるとは思ってもみなかったのだろう。
オレリアは満足気な顔をしている。
ルビーはあまり表情に出なくて解りにくいが、少し悲しそうな顔をしている。
「それは良い。フレンダの事はお頼み申し上げる」
「ありがとうございます」
ここでマイセンがレヴィンに物申す。
「ナミディア卿、フレンダなど連れて行っては、不幸が移りますよ? 考え直された方が良いのでは?」
「いえ、もうフレンダさんにも話してありますし、私は迷信など信じておりません故」
「魔女を妻にするなど、お家を滅ぼすおつもりですか?」
「まだ、妻にするとは言っていませんが……まぁ迷信に過ぎないと言う証明にはなりそうですね。そうそう、まだ視察する事はたくさんあります。今日はマイセン殿もご一緒にいかがですか?」
「わ、私ですか? 有り難い申し出ですが、今日は予定がありますので……」
「そうですか。それは残念です」
その後は、ポツポツと雑談をしながら食事を終える。
席を立って自室に戻る途中でレヴィンは、ウォルターに告げる。
「マイセンの方は頼んだぞ」
「御意」
ウォルターは少し頭を下げながらそう言った。
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