「いったん、王都に戻ろうと思います」
レヴィンが問答無用でそう言い放つが、誰からも反対意見はでなかった。
「古代遺跡内の本を見たけど、ありゃ読めたもんじゃない。なので、遺跡攻略の優先順位は下がりました。さっさとベネディクトと合流して魔の森に行こう」
またまた誰も異議を唱えない。
少しは意見を出してくれてもいいのよ?
何事もレヴィン一人で考えて決めるのも考え物である。
パーティのリーダーが潰されたら機能しなくなるという事態は避けたい。
ちなみにシーンとダライアスはライオネルの仲間の白魔導士に回復してもらった。
対価としてお金を渡そうとしたが、断られた。
「貸し一つな。お前らはまだまだ強くなる。今の内に恩を売っておいた方がよさそうだ」
ニヤニヤしながらぶっちゃけるライオネル。
いい性格してやがる。
大事を取って、ここで一泊する事にした。
冒険者用の仮設の小屋があるので、そこで休息を取る。
すごい簡素な造りだが外で寝るよりもマシだ。有り難い事である。
朝になると、開店していた屋台で温かいスープを頼む。
夏と言えども朝は温かい食事に限る。
レヴィン達は持っていた干し肉とスープで朝食を済ませた。
ただ王都へ引き返すのもなんなので、研究者の中で王都へ行く人を見つけて道中の護衛を引き受けた。
冒険者ギルドを通していないが、王都で任務を証明してもらえば昇級ポイントは貯まる。
王都へは来た道を引き返す感じだ。
今度は精霊の森の東の街道を北上する。
途中で森からでてきた魔物と遭遇するが特に苦労する事もなく討伐した。
依頼人の都合で遺跡を出発したのが遅かったため、王都まで後、半日ほどの場所で日が暮れてしまった。
野営の準備を開始する。まぁ元々、一日かかる道程なのだ。途中で一泊するのは解っていた事である。
火を起こして持ってきていた鍋で肉野菜スープを作る。
遺跡研究者のバーナビーと一緒に夜食を摂った。
シーンがスープをよそって彼に手渡す。
「ありがとう」
「別に……」
シーンは相変わらずである。
彼は確か古精霊族の研究者だったなと思い、質問をしてみる事にした。
たき火の傍で全員に食べ物がいきわたるのを待っていたレヴィンが切り出した。
「バーナビーさんは古精霊族の研究をされているんですか?」
「ああ。そうだね。本当は冒険者になりたかったんだけど、職業が冒険者向きじゃなかったから……」
「なんの職業なのですか?」
こういう時は子供の立場は便利である。
突っ込んだ質問をしても大抵の場合、笑って許してもらえる。
「鍛冶師だよ。実家も鍛冶屋だったから、本当はぴったりの職業だったんだけど……」
「なるほどー。でもどうして古精霊族に興味を持たれたんですか?」
「子供の頃、古精霊族が出てくる、お伽噺をよく聞かされた事もあってか、学校の世界史で古代の歴史を学んだ時、興味を惹かれたんだ」
確かに幼少の頃に古精霊族の御伽話を聞いたような記憶はある。
「へぇー。誰でも研究者になれるものなんですか?」
「どうかな? 僕は勉強して一般の中学に入って、歴史学の教授の研究室に拾ってもらったんだ。今は歴史研究の国立研究所の所属になっているよ」
専門の魔法と騎士の中学だけでなく一般向けの中学もあったんだな。
まだまだ知らない事ばかりである。
レヴィンの質問は続く。
他のメンバーはその問答を黙って聞いていた。
「どんな研究をされているんですか?」
「古精霊族の歴史だね。古代の文献なんかはよく読んでいるよ。彼等は旧暦時代から存在していて人間とも良好な関係を築いていた。長命で温和、そして気の長い性格をしていたそうだよ」
何故だか、古精霊族は高飛車で排他的という印象があったがそんな事はないようだ。
前世のゲームや小説でそんなイメージがついてしまったのかも知れない。
「古代は織物や古精霊族の秘薬、木製の工芸品などが人間の国に持ち込まれていたようだ」
「古精霊族の国かぁ~。一度行ってみたいな~。国はどこにあるんですか?」
アリシアが少し間延びした声で質問する。
古精霊族の事は学校で学んだ事がない。主に人間の敵として存在している、魔物についての学問はあるのに友好種族の事は教えないのだろうか?
この質問にバーナビーの顔が少しばかり曇った気がした。
「残念ながら、詳しい事は話せないんだ。国家公務員だからね。色々守秘義務があるのさ」
「そうなんですか? そう言えば古精霊族の事は学校では習いませんね。これも何か関係があるんでしょうか?」
「いや、中学校に行っているなら多分、二年生の時に世界史の授業で習うはずだよ。ほんの少し触れる程度だけどね」
なら教えてくれてもいいのにと思うレヴィンなのであった。
「世界史ではどんな事を教えてもらえるんでしょうか?」
「本当に簡単な事しか習わないと思うよ。さっき話した事だとか、魔法技術が発達していたとか」
古精霊族と言えば精霊魔術という印象があるが、進んでいたのは魔法技術なのか。
「彼等の魔法技術がなければ、人間は今頃、魔族に滅ぼされていたかも知れないね」
そうバーナビーが続ける。
「では今ある魔法は全て古精霊族が創ったものなんですか?」
「ほとんどがそうだと思うよ。魔法陣に使われている神代の言語は、ほぼ古精霊族しか使っていなかったしね。神代の言語に関しては、今なお不明な事の方が多いからね……」
彼はそっとため息をついた。
「もう疲れたので、僕はお先に眠らせてもらうね……。じゃあお休み……」
バーナビーが休んだので、見張り番を決めてレヴィン達も休む事にした。
翌朝、日の出と共に目を覚まし、軽い朝食を摂った後、王都に向けて出発した。
その道中にも古精霊族の事を色々聞いてみたが、ほとんどはぐらかされてしまったレヴィンであった。
昼過ぎに王都に無事何事もなく到着した。
冒険者ギルドによって護衛を受けた件を証明してもらいバーナビーと別れた。
その後、受付のレオーネに古精霊族の事を聞いてみた。
しかし、一般中学の授業で少し教えてもらったぐらいで詳しくは知らないとの事である。
ついでに古代遺跡で死霊系の魔物だ出た話をしたが、この件に関しては、神殿が事態に介入すると言う話が冒険者ギルドにも通っているようだ。
次に掲示板に遺跡関連の依頼がないか確認したが、やはり臨時研究所の護衛依頼くらいしかないようだ。
それは長期に渡って拘束される仕事なのでレヴィン達にとっては旨味はない。
ベネディクトとは、明日、冒険者ギルドで持ち合わせしている。
なのでとりあえず、明日からのカルマ行きの護衛依頼を受ける事にした。
依頼の事前会合はレヴィンのみが出る事にして、今日は解散する事になった。
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