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3.禁術とお父様

公開日時: 2021年7月30日(金) 15:18
文字数:891


✛ ✛ ✛ ✛ ✛


人の話し声がする。

真っ暗だけど、グラスをおく音、椅子を引く音、いろんな音が鮮明に聞こえた。

これは、夢?それとも······。


「ラード、アレはどうするきだ?」

怒ったような男の人の声がする。

ラードは、わたしのお父様の名前だ。

「封印すべきだ」

(封印?)

これってもしかして、私のお母様の話?

「大丈夫だよ。彼女に悪の心はない。このままにしておこう」

お父様は、やっぱり優しい。

ダンッと、テーブルを叩く音がした。

「禁術で生まれたアレに情緒なんてない!あの禁術は代償がいるんだ。お前の寿命と、襲いかかる災い!あんな力を野放しにしていたらまた国が······!」

「情緒は俺が教えていく。······ハクは少し真っ白なだけだ。優しく接すればきっとそのとおりになる。俺は信じてるよ」

「······お前は甘い。いつか身を滅ぼすぞ」

「どのみち長くないからな」

「私はとてもだがあんな化け物······」

ガタンと音がした。


「は、ハク聞いていたのか」

ゴウと音がし、

「うわああぁ」

男の叫び声と炎が燃えるような音がする。

続いてお父様の必死な声が。

「ハク!やめてくれ!!」


私は信じられない思いで炎の音を聞いていた。

(なにこれ、うそよ。お母様がこんなことするなんて。)


「ゼル、しっかりしろ!」

「だ···から、言ったんだ。こいつは人を殺すために生まれたんだ。心なんて······」

それでもお父様は、

「違う、救うために生まれたんだ。今は怒りの感情しかもたないかもしれないが、俺が必ず変える!」


「だから、消すなんて言わないでくれ······」


(お父様······)

お父様がどれだけお母様を思っていたか、胸が痛いくらいに伝わってきた。

(でもきっとだめだったんだ)

だってお母様は今どこかに封印されているから。


(私、この会話を前にも聞いたことがある気がする。どうしてだろう。まだ生まれていないはずなのに。)


その間も炎は燃え続けていたみたいだった。


こんなのは嫌。

お母様、貴方を想うお父様の気持ちを傷つけないで。

お母様が笑顔じゃないと、私は、お父様は、悲しい思いをするのー······。



意識だけの世界で私はきっと今、泣いていた。

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