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あの場からずっと走っていた俺達は家に着いたー。
「光!急いでここを出て行くんだ!」
「おい!ちょっと待てって!ルシファーの子ってどういう事だよ!?それにちゃんと説明もしないで出てけってどこ行きゃいいんだよ!何でこんなことになるまでずっと黙ってたんだ!!」
「俺はお前たちを自分の子同然に育ててきた。光。お前もそうだ。ルシファーの子だが普通の人として立派な大人になるよう見届けたかった…。どうにか“その力“が目覚めないように。。だが、まだ大丈夫だ!とりあえずここを出てコイツの所に行け!」
ジジイは紙切れを俺に渡した。
「これも持っていけ光…。いつかこんな日が来るんじゃにかとは思っていた―。俺は願わくばきてほしくなかったがな。。その為にお前を育てたつもりだ…。まぁ、起きたことはしょうがねぇ。」
ジジイが次に俺に渡したものは“刀”だったー。
しかし、刀のくせに持ち手だけ。肝心の「刃」がない。
何だこれ―⁉
しかも持ち手には古びた包帯のようなものがグルグル巻かれており、何やらお札が貼ってあった。
「…また!次から次へとなんだよこれ!次は剣だと?しかも刃がない。こんなのどうすんだ!…まさかRPGみたいにデーモンとかいうのと戦えって事か(笑?」
「いや、むしろ使うな。その刀はもともと物魔界の物質で作られたものだ。お前をデーモンから守る為にお前の血から作った特別なお守りみたいなもんだ。だが魔力が覚醒した今のお前がそれを剥がしたら人間じゃいられなくなるぞ。」
なんだその物騒な話は。
「さっきから言ってるがとにかくもうここを出てソイツの所に行け!話は全部そこでだ!早くしねぇと“アイツ”が……!?!?!?」
………ドクンッッ!!
「…おい…どうしたジジイ⁉…アイツって誰だよ!」
ジジイが急に倒れ込む。
「大丈夫か!おい!しっかり……!!」
……ギョロ。
ジジイと目が合った。
だが、“コイツ”はジジイじゃねぇ…!!
直感で分かったー。
「――フッハッハッハッハッ!!!!!!!!
ついにこの時が来たか!!待ちわびたぞ我が“息子”よ!!フッハッハッ!!
王の私がわざわざ人間界まで来てやったそ!有り難く思え息子よ!」
「…なんだてめぇは…!」
「おいおい…父親に向かってなんだその態度は?…さっきから言ってるであろう。正真正銘お前の“父”!私は物魔界の王、ルシファーだ!そしてお前は私の息子なのだよ!」
突如現れた“ルシファー”とかいう奴。現れたと言っても姿は無く、霊が憑りついたみたいになっている―。
ルシファーがジジイの体に憑依したらしい。
―――ゾゾゾッッ……!!!
背筋が凍りつくような感覚ー。
やべぇ…なんだコイツ……体が動かねぇ…!ビビッてんのか…俺……。
「さぁ!いくぞ息子よ!我らが物魔界へ!」
「…寄んじゃねぇ…!!」
「ん??…なにを怖がっているんだ息子よ。早く本来の力を解き放て!お前は私が人間界を手に入れる為に必要な“器”なんだよ息子!お前の体があれば人間界に入り込むことが出来る!!早く私の為に働いてくれ!いくぞ!」
ルシファーは俺を掴み強引に連れて行こうとする。
……!!!!
本気で振りほどこうと力入れてんのにビクともしねぇ…!!
くっそ……このままじゃ……俺は……
「やっべ……情けねぇ……誰か……助けてくれッ……!!」
助けを求めたところで誰もいない。聞き取れないほどの小さな命乞い。。
「フッハッハッ!!王の息子が人に助けなど求めるな。なぁに…すぐこっちの世界にも慣れるさ。むしろ本来はこっちにいるべき悪魔なんだからな息子よ。愉快愉快。私も久々にワクワクしているぞ。」
―――ブォォォォン!!!
黒い時空の歪みみたいなもんが目の前に現れた。
「これは物魔界へのゲートだ。いくぞ!」
「……!!?やめろ!!俺は行かねぇ!お前の息子でもない!人間だ!!」
「…全く…まだ騒ぐか。。面倒だ…少し眠っていろ。」
ルシファーは俺目掛けて手を振り上げたー。
だがー―。
――ドシュ!!!
「……なっ…!!!??」
ルシファーは自分の体を貫いたー。
「……フゥ~……」
「……なにッ!?このクソデーモンハンターがッ!!」
ルシファーに憑依されていたジジイが意識を取り戻した。
「人の体で何してやがるんだ…ルシファー…!!高く付くぜ…俺の体はな…。」
「ジジイ…!!」
「小賢しいデーモンハンターめっ…!!まさか自ら刺すとはッ…!なんて奴だ。」
「これは俺の体だ…!!それに、テメーが連れて行こうとしているコイツは……」
――ギュっ……!!!
俺を掴んでいたジジイの手に力が入った。
「世話ばっか掛ける……正真正銘……”俺のバカ息子”だッ!!……体も光も…両方返して貰うぜルシファー…!!」
「――グッッ!!…なんて奴だ…もう憑依が持たない…!まぁいい。このまま力ずくで連れていく…!!」
やべぇ。
体がどんどんゲートに吸い寄せられていくー。
ジジイとルシファーは今にも倒れそうだ。
ジジイの意識が危ない事は一目瞭然だ。
「ジジイ………死ぬんじゃねぇぞ…!!俺は、あんたにまだ何も恩返しできてねぇ……一人でやれるっつうのを示せてねぇんだよ……こんなどさくさに紛れて絶対死なせぇぞ……」
――カラン…!
足元に落ちていた刀が当たったー。
――もうこれしかねぇ………!!
俺は刀を拾ってお札を剥がした―。
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<魔力が覚醒した今のお前がそれを剥がしたら人間じゃいられなくなるぞ。>
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ジジイの言葉が頭をよぎったが関係ねぇ……!!!
――ビリビリッッ!!
―――ブォォォォン!!!!
お札を剥がした瞬間俺の体中から黒炎が凄い勢いで溢れ出したー。
もの凄い“魔力”。魔力なんて知らないのに、俺は直感でそう思った―。
覚醒したであろう俺はこの魔力が初めて自分のものと感じ取れたー。
だがそれと同時に、自分でも思っている以上の魔力の強さに、コントロールが出来ないということもすぐに感じ取ったー。
「やっべ…!!どうすりゃいいんだ…!」
魔力だけが溢れ出す。
状況は変わらず、もうゲートに体が吸い込まれる寸前ー。
もうヤバいと思ったその刹那―。
キィーーーーーーーン・・・・・・・・・・。
『・・・ここで会ったが何年目でしょう?・・・ルシファー様・・・いや・・裏切りのクソルシファーよ!!!!!!!』
突如目の前に、女が現れた―。
オレンジ色の紙が靡き、肌は紫色―。
誰が見ても人間じゃないことがすぐに分かる―。
誰だコイツ―。
俺がそう思った矢先、ルシファーが声を上げた―。
「…!?!?!?!?…きっ、貴様は!!」
ルシファーは驚愕の表情。
光は全く分からず、時間が止まったようにただただ茫然としている。
だが、この二人の時間はしっかりと時を刻む―。
ルシファー目の前にはなんと、いつの日か婚約破棄し、ルシファー自ら物魔界を追放した“アイツ”ー。
―そう。“元フィアンセ”がここ人間界…それもルシファーの息子の光に憑依しているー。
「再び会えたようですわね!!…ルシファー!!」
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