スタッ…スタッ…スタッ…。
入ってきた男は黒板の前の教員の机で止まると、こちらを見てきた。
「え~…どうも初めまして一年生の皆さん。私はデーモンハンターの鈴木(すずき)です。
主にソウルアカデミーの生徒の教育を担当しています。宜しく。
え~…では早速ですが、先程アゼル様からもお話があったと思いますが、君達にはまずこちらで決めた班に分かれて
活動して頂きます。」
そう言うと鈴木は手に持っていた紙を配った。
「君達はデーモンハンターの卵。まずはここで訓練生として頑張ってもらいます。
こちらに書かれた班で、各自それぞれの“隊”に面倒見てもらって下さい。裏面に各隊の場所を記した地図が載っていますから、それ見て行ってください。私からは以上になります。それでは、健闘を祈ります。」
スタッ…スタッ…スタッ…
ガラガラガラガラッ…!
ピシャン!
「「「……………………。」」」
クラス全員が一瞬戸惑った。
だが、一人が喋り始めると次々連鎖が起こる。
「とりあえず行くしかないよね!」
「君かな?一緒の班。」
「初めまして。宜しく!」
皆は次々に動き始めた。
「光!」
陽斗は紙をヒラヒラさせながら俺に話しかけてきた。
「やっぱり。見て。同じ班!」
陽斗が指さした班のところには確かに「橘 光」のすぐ下に「橘 陽斗」という名前が書かれていた。
「マジかよ。」
「保護者だからね。」
「はぁ~。」
ため息しか出ない。すると…
「光君!陽斗君!私も同じ班!」
柚木も元気いっぱいに俺に紙を見せつけてきた。
「マジか。」
「よろしくね柚木さん!」
「こちらこそ!」
ニコニコ話している二人をよそに、俺は再び紙を見た。
俺と陽斗と柚木以外にも名前が二人…。
「清影 仁」
「白石 天花」
誰だ?と思いながらふと顔を上げるとー。
「あなた達?この同じ班の名前!」
目の前に女の子が立っていた。
「私、白石 天花(しらいし てんか)!よろしく!」
「あ!私、柚木真紀です!よろしくね!」
柚木より少しだけ背が高いだろうか。
キリっとした目元に端正な顔立ち。
柚木のフワフワした雰囲気とは真逆のサバサバ系。
「どうも。橘陽斗です!」
「よろしく!君が橘陽斗ね!じゃあこの橘ひかり…?ひかる…?は君?」
白石天花は読み方に迷いながら俺に聞いてきた。
「光(きら)な。橘光。」
「光(きら)⁉⁉…なかなかのキラキラネームだなぁ。…光だけに(笑!」
なんだコイツ。。
「うまいね白石さん!」
「うまくねぇよ何も!人の名前で遊ぶな。」
「アハハ!まぁいいじゃん!…ところで…残りの一人は?…この『清影 仁』って人。」
そう。
紙にはこの白石天花ともう一人の名前ー。
辺りをキョロキョロ見渡すと、静かに席に着いている男に目が留まった。
「…まさかアイツじゃねぇよな…」
俺が見ているのはさっきリリスと話していた二人の男のうちの一人。
クールぶってるイケ好かない方。少し嫌悪感が増す。
そこへ白石がグイグイ奴の所へ聞きに行った。
「…ねぇ!あなたがこの清影って人?」
「…ああ。」
男は静かに答えた。
「そっか!私、白石天花。よろしくね!もう皆集まってるよ!……お~い!皆!」
白石はこっちこっちと手をヒョイヒョイさせながら俺達を呼んだ。
俺と陽斗と柚木はそこへ集まる。
「これで班は全員揃ったね!自己紹介したら!」
白石が元気に仕切る。
「初めまして。橘陽斗です。よろしく!」
「私は、柚木真紀です!…よ、よろしくね!」
「橘光。」
俺は名前だけさらっと言った。
「…清影 仁(きよかげ じん)だ。」
そいつもさらっと名前だけ言った。
やっぱり何かイケ好かん。クールぶりやがって!
「つか清影君イケメ~ン!モテるでしょ!」
白石の言葉に俺は更に奴への嫌悪感が増した。
【男の嫉妬はダサいわよ。】
またもやリリスが急に話しかけてきた。
【嫉妬なんかじゃねぇよ!つか何に嫉妬すんだよ俺は!コイツのクールぶった態度と何気に女にチヤホヤされそうな顔がなんかイラつくんだよ!!】
【ほら。嫉妬じゃない。】
【違ぇよ!同族嫌悪ってやつだきっと!】
呆れたリリスはため息を残し消えていった。
おれとリリスがしょうもないやり取りをしているのと同時に、会話はどんどん続いている。
「…そういえば白石さんや清影君はどうしてここにきたの?」
陽斗が二人に聞く。
「ん、私?私はね…実家がお寺なの!それで結構家族とか親戚にもデーモンハンターがいて、私もなろうかなぁって!」
「へ~。家がお寺なんだぁ。凄いね!清影君は?」
スッ…………………。
その瞬間空気がピリついたーー。
「…俺は仲良しごっこをするつもりはない。くだらん事聞いてくるな。」
「「「………!!」」」
皆は清影の言葉に驚いた。
だが俺はこの態度に少しキレる。
「…おい。お前なんだよその態度。」
俺と清影が睨み合う。
「お前らが馴れ馴れしいんだろ。そっちこそ態度どうにかしろよ。」
「あぁ?」
二人の醸し出す空気にいつの間にかクラス中の視線が集まっていた。
(…まずい…!!)
それに気づいた陽斗がすぐさま止めに入る。
「光!やめなよ。」
陽斗の言葉で俺も空気を察した。
そうだった。。あんま目立たないようにしないと……にしてもコイツイラつくなぁ!!
やっぱここで一発ぶん殴っとくか?
【やめなさいよ。ホントいつまでたってもガキなんだから。】
またリリス。お前もか。
「チッ!」
全然納得いかないが俺はとりあえず陽斗とリリスの言う事を聞いた。
「はいはい。そこまで!早く隊の場所に行こう!男の子同士の喧嘩は後でやってくれます?」
白石が場の空気を変えた。
「そうだね。早く隊に向かおう。」
「う、うん!」
「まぁしょうがねぇな。」
俺と清影はまだ若干ピリついたままだったが、五人で隊のある場所へと向かった。
他の生徒達もそれぞれの班で隊へと向かっていったー。
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