魔王から婚約破棄&追放された令嬢が魔王の隠し子の人間に転生して魔王を倒すべく再び魔界へ乗り込む話

キョロ
キョロ

episode.14 ソウルアカデミークラス

公開日時: 2021年9月3日(金) 08:30
文字数:3,002

柚木真紀との会話も終える頃には、クラスの全員が席についていた。

すると突如ー。


……ボワンッッ!!


「は~~い!皆さん♪」


アゼルが黒板の前に現れた。


「アゼル!」


俺が反射的に奴の名前を呼ぶと、間髪入れずアゼルが言い返す。


「そこの君!私はこの学校の理事長ですよ♪高校生にもなって名前を呼ぶ時に“さん”付けも出来ないんですか??」


「何を今さら…」


「光。」


陽斗がすぐに止めに入った。

陽斗は小さく首を横に振りながら、“周りを見ろ”と言わんばかりに俺に視線で訴えてきた。


そうだ。。

あんま目立つのは良くないんだった。。


何も言わないが、アゼルも視線で“分かりましたか?”と言っているのが聞こえてきた。


「え~皆さん!それでは改めまして!私、アゼル・アバドンと申します♪皆さんも知っているとおり、この聖霊専門高等学校はデーモンハンター養成学校でもあります。今年はソウルアカデミーに入学した生徒達がこんなにいて私は嬉しいですよ♪」


アゼルはいつものようにニヤニヤしている。

つか、ソウルアカデミーに入った奴らって全員このクラスなのかよ。

…まぁ分かりやすいっちゃ分かりやすいけど。

普通の生徒の前でアゼルもあんな登場の仕方しねぇよなそりゃ。

俺は何気なく周りを見た。

良く視ると、全員から魔力を感じる。

今まで気付かなかったのか俺は。。


さっきリリスが言ったように、柚木と同じ程度の奴らが大半。

全員デーモンハンターを目指してんのか。。


ゾゾゾッ・・・


「!!!!!」


なんだこの感じーー。


バッ!


魔力を感じる方を見ると、他の奴らとは違う、魔力みたいなもんを纏った奴が二人いたー。

今までみたいな魔力とは少し違う感じだ。


一人はなんかいかにもクールぶった目つきの悪い男。

イケ好かねぇ。。直感でそう思った。


もう一人も男。

なんだろう。。隙が無い感じがする。


そんな事を思っているとリリスが出てきた。


【あっちの子とそっちの子。二人はもう“魂力(こんりょく)”を扱えるみたいね。】


【こんりょく…??】


【人間がデーモンと戦う時に使う力よ。私達の魔力と似たようなものね。あなたも使えるようにならないと。】


【お前もさ。何でそういう事教えてくれないわけ?大事な事だろ。】


【あなたが聞かないから。】


知らない事をどうやって聞くんだよ!

そう思ったが面倒なので黙っていた。


「いいですか皆さん!」


アゼルはお構いなしに話を続けている。


「このソウルアカデミークラスは、私の特殊な魔力で結界を作っていますから、他の生徒たちに気付かれる事は基本ありません!見た目も雰囲気も普通のクラスと一緒です!

ただ、少し霊感の強い子は何かを感じるかもしれませんが、そういう子は逆にこのクラスに近づかないでしょう♪

あと気付くのはデーモンハンターだけです!

なので普通の学校生活を満喫して下さい♪もし他のクラスの子と仲良くなって『そっちのクラスどんな感じ?』となった場合は各自でうまく誤魔化して下さいね♪」


「一番大事なとこ自己責任かよ。」


思わず心の声が漏れた。


だがアゼルは俺の発言を完全スルー。


「では!皆さんが立派なデーモンハンターになる日を楽しみにしていますよ♪

まずは!各自こちらで“班分け”をしていますので、それぞれの先生についてデーモンハンターの事を学んでください♪」


そう言うとアゼルはまたどこかへ消えた。

自由な奴だ。

そんな風に思っていると柚木が話しかけてきた。


「橘君達もデーモンハンターになるんだね!びっくりだなぁ!」


そっか。

このクラスの奴全員がデーモンハンターになろうとしてるんだよな。

って事は当然彼女もか。


「意外だな。お前もそうなのか。」


「うん!」


「柚木さんも“視える”の?」


「少しね!そんなにハッキリではないの。」


「そうなんだ。じゃあ僕と近いかな!僕も少しだけ視たり感じたりすることが出来る程度なんだ。」


「そっか!やっぱり私以外にもこんなにいたんだね。なんか少し安心しちゃった。不安だったから。」


「そりゃそうだよね。。誰でも不安になるよ。デーモンなんてものが視えたら。」


「橘君達はいつからデーモンに気付いたの?」


「僕は子供の頃から少し感じられたかな。そういう霊感が強いのかも(笑。でも光は最近だよね。」


「ああ。ほんの数週間前。」


「え!そうなんだ!それですぐデーモンハンター目指そうとするなんて凄いね!なんかこう…決断が!」


「あー…まぁな。」


ルシファーの息子で倒すつもりなんて言えないからな。


【まったくね。】


リリスもツッコんできた。


「お前はなんでデーモンハンターなんかなろうと思ったの?」


「私は…」


柚木の顔が先程同様に少し暗くなった。


「…さっき兄弟がいたって言ったよね。。それが理由なんだけど。。実はね、私お姉ちゃんがいたの。

兄弟じゃなくて姉妹かな。でね、そのお姉ちゃんが事故で三年前に死んじゃったー。

…私は凄く悲しくて何日もご飯が食べられなかった。。でも、お父さんとお母さんが一生懸命支えてくれて…

自分たちも悲しいはずなのに……。それから段々と、私も少しづつ戻っていけたの。。」


柚木が過去のことを話した。


「そうか。。それは辛かったね。。大切な人が急にいなくなる寂しさは僕も分かるよ。。」


「橘君も…?」


「僕達はお義父さんがね。血は繋がっていないけど、何の関係もない僕達をここまで育ててくれた、とても尊敬できる人だった。。」


「そうなんだね。。辛いよね。。」


そんな中、一人空気を読まない光が話に割って入る。


「お姉ちゃんが死んじゃったのとデーモンハンターになるのって何か関係あんのか?」


「あ!そう!まだ話の続きがあってね…。お姉ちゃんが死んで一年くらい経って、その時からかな…?

たまにデーモンみたいな霊みたいなものが視えるようになってきて、初めのうちはそんなに気にならなかったんだけど、そのうち悪寒がどんどん強くなって、一回霊媒師さんに視てもらったんだ。。そうしたら暫く良かったんだけど

ま、ある日急にまたデーモンが少し視えるようになってきたの。しかもそこから何だか“誰かに見られてるような”感じがして。。

怖いし、親にもあんまり心配掛けたくなかったから色々調べたりもして。。それで視てもらった霊媒師さんにも相談したらデーモンの可能性があるって。最初は信じ難かったけど。実際自分の身にも起きているし、なにより…

お姉ちゃんと関係あるかもって感じがして……。」


「お姉ちゃんと…?デーモンにやられたわけじゃないだろ?」


「うん。ただの交通事故なんだけどね…。私の思い込みだと思うだけど、どうしても気になって。。」


「それでここに来たのか。」


「理由は人それぞれあるよ。」


「橘君も……」


そう言いかけたとこで俺はまた割って入った。


「あのさ、さっきから橘君橘君って、俺か陽斗か分からないんだよね。」


「あっ!ごめんなさい…!私もどうしようかと思ってて…」


「普通に名前でいいよ。ややこしいだろ。」


「うん。分かった。そうするね!」


「後、いちいち謝んな。」


「あ!つい口癖で…ごめんなさいっ!」


「だからそれやめろって!」


「あっ!」


「光。もうちょっと優しく言えないの?」


「何がだよ。普通に言ってるだけだろ。」


「ごめんね柚木さん。光こんなんだから気にしないで。」


「ううん!そんなことないよ!…それより橘くっ…じゃなくて、光君と陽斗君はなんでデーモンハンターに

なろうと思った……」



ガラガラガラガラッーー!!


その瞬間教室のドアが開き、誰かが入ってきた。


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