「―チッ!…お前も“こっち側”だったのかよ(笑!、ますますイケ好かないなぁ…。なぜ俺と“同じ悪魔”なのに俺の邪魔をするッ!しかもその魔力…お前何者だぁ??」
「こっち側??同じ悪魔だと…?生憎そんなつもりは一ミリもねぇ。勝手に話を進めんなっ…!!意味不明な事ばっか言ってんじゃねぇよ!!」
――バッッ…!!
俺はコイツから距離を取った。
「…逃がさねぇぞ!!お前が邪魔をするならここで消す!!覚悟しろッ!!」
初めて正面から向けられた殺意―。
この世のものとは思えない存在と対峙しているこの瞬間が、非現実過ぎてリアル感がまるでない…。
だが、奴が殺そうとしてくるのは事実。一瞬で色々な事が頭を過る―。
そんな中で突如、奴の表情が一変した―。
「……きっ!貴様はッッ!?!?」
…なんだ??
奴が見ているのは俺じゃないーー。
“俺越しに”何かを見ている。
視線が俺の斜め後ろ方向へーー。
一体誰がーーー。
「……ジャノタマシイヨ…カミノカゴノモト ブツマニキセ……」
「……は…?……ジジイ…!?…なんでッ……!!」
俺の後ろにはジジイの姿が――。
なんでこんな所にいるか疑問に思ったがそれ以上に、この状況を見て何故驚かない…??
それどころか…奴に向かって何か唱えている…のか?
「クソっ!!貴様 “悪霊狩り(デーモンハンター)”!!
…チツ!マズイ…!!アイツを殺さなければ!邪魔するなァァァァ!!」
――シュバッッ!!
奴はジジイに向かっていくー。
「おいジジイ!!」
一瞬の出来事ーー。
心配とは裏腹に、ジジイは軽やかな身のこなしで奴の攻撃をよけるや否や、奴の腕を掴み地面に倒した。
「…ナムアミダブツ…ナムアミダブツ……アシキタマシイヨ……ホロビヨ!!」
――パァァァンッッ!!!!
ジジイの唱えと共に奴が光に包まれ、黒いモヤのようなものが消えていき普通の人間の姿に戻ったー。
「……ジジイ…?」
「光!大丈夫か!!」
いつの間にか俺の体から溢れていた黒炎が消えていた。
「…一体何がどうなってんだよこれは…。」
ジジイはどこか覚悟を決めたような表情をした。
「…何がって。お前ももう視えているだろ?ほら!これが“悪霊(デーモン)”だ。」
「ほら!…じゃねぇよ!!ホントにいんのかよこんなのが!そこらにうじゃうじゃいるじゃねぇか…。」
俺に視えていた黒いモヤモヤやさっきの奴はどうやら悪霊らしい。
「悪霊(デーモン)は虫みたいな小さく弱いやつから人間に憑依するやつまで多種多様にいる。俺達の『人間界』とこいつら悪霊(デーモン)が存在する『物魔界』この世界は二つに分かれているんだが、こいつらデーモンはこっちの世界に入り込んでしまっている……まぁ兎に角、そんな事よりも光。早くここを離れるぞ!」
「おいおい!まだ話の途中だろうが。」
「詳しいことは後だ!嫌でも分かるようになる。…まずはここを離れるんだ!お前の黒炎の魔力が“覚醒”して、それが物魔界にも知れ渡った…。これからお前は狙われるぞ…!」
ジジイはすぐに走って行くー。
訳が分からないがしょうがない。
俺もとりあえず走ってジジイに付いて行くー。
こんな焦った表情のジジイは見たことがない。
「狙われるって誰にだよ!」
「色々だ色々!とにかく大勢に!。デーモンハンターや悪霊(デーモン)達。。様々な理由でお前を狙ってくるだろう。」
「…そのデーモンハンターとかってのも意味分からねぇが………。
……おいジジイ……
何が起きてる…?…俺は一体何なんだ……?」
さっき奴から言われた言葉。
“こっち側”…“同じ悪魔”…。
気にしたくないが、どうしても気になってしょうがない。
核心を突く疑問を、俺はジジイに投げかけた。
ジジイはこの時、少し寂しそうな表情だった―。
「光……お前は………
……物魔界の魔王、『ルシファー』の子供だ…。」
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