魔王から婚約破棄&追放された令嬢が魔王の隠し子の人間に転生して魔王を倒すべく再び魔界へ乗り込む話

キョロ
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episode2. 橘 光(たちばな きら)

公開日時: 2021年8月25日(水) 11:50
更新日時: 2021年9月9日(木) 12:50
文字数:2,272

~~人間界~~


雲一つない晴天の空。

桜舞い散る中、今年も各地で卒業式が行われていた。


ここにいる青年もその一人。


今日で晴れて中学卒業ー。

なのに……。


「…オラッッ!!」


ドカッ!! バキッ!!


俺は喧嘩をしているー。

こんなことは日常茶飯事。

同じ年頃の連中が突っかかってきやがる。


「…うわぁ…!!」

「やっぱやべぇよコイツ!!…」

「逃げるぞお前ら!」


そして俺はそれを返り討ちにしてきた。

そんな中学三年間ー。


今日でそれも無事(?)終了。。。なのか?


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「…ただいま~。」


俺は家に帰った。家っていってもここは家じゃなくいわゆる児童施設ー。

俺は生まれてすぐこの施設の入り口の所に捨てられていたらしい。

だから両親が誰かも分からない。そもそもまだ生きてんのかさえ分からない。


「おかえり!光(きら)!」


「おう。」


あ。光(きら)ってのは俺の名前な。「橘光(たちばな きら)」これが俺の名前。


出迎えたコイツは「橘陽斗(たちばな はると)」。

陽斗も俺と同じ日に施設に入ってきた。歳も同じ。

全く関係ないけど戸籍やら届け出やらの書類が手間で、同じ苗字の腹違いの兄弟という複雑な事になっている。


まぁそんなことは別にどうだっていい。


「…やっと帰ってきたかバカもんが!!」


「うるせぇなジジイ。」


いきなり怒鳴ってきたこのジジイはこの施設の主。俺達のお義父さんってとこ。施設には俺と陽斗以外にも身寄りのない子供が何人か一緒に暮らしている。


ここが俺の家だ。


「…とにかく腹減ったよ。飯ある?」


「ちょうど皆夕飯食べてるよ。」


食堂には賑やか。皆でご飯を食べていた。


「おかえりーキラ兄!」


「まーたこんな時間まで遊んでたの?光くん!」


「まーな。」


毎日こんな感じだ。


「なにが「まーな。」だ!!卒業式で昼には学校終わってるのにどこほっつき歩いてやがった!!」


「…ほんとにうるせぇなジジイは…」


「光…また喧嘩してきたでしょ。」


「バっ!!バカ!余計なこと…!」


俺は陽斗の口を慌ててふさいだが時すでに遅しー。


「なんだと光!お前また喧嘩してきたのか!!このバカが!!あれほど無駄に暴れるなっつただろーが!」


ジジイの雷が落ちた。


「お前!仕事場見つけたのか?どーなんだ!」


「…ゔッ…っ!!」


痛いところを突かれた。


「全く…お前ってやつは…そんなんでこの先だいじょうぶか…?」


「分かってるよ俺だって。。」


「本当に理解して言ってんのか?…いつかお前らはここを出て一人でやっていかなきゃいけないんだ!そろそろちゃんとしろ!」


「…!だから分かってるって言ってんだろうが!!!」


バンッ!!!


光は部屋を出て行った。


陽斗は光を追いかける。


「…なんか理由があったんでしょ光。別に詳しく聞かないけど。いつものことだから。」


「お前はスゲーよな。。春からあの名門校に通うんだから。ずっと勉強してたもんな俺と違って…」


「別に凄くないって…。光は僕より色々出来るんだから。あとはその方向性を見つければさ。光はどうするのこれから?」


「…なんだよ。結局お前も俺にちゃんとしろって言うのか?」


「心配してるんだよ。お義父さんだってさ。口は悪いけど。。」


「……分かってんだよ俺だって。早くちゃんとしなきゃって…。」


頭では分かっている―。

でも、何をどーしたらいいのかが分からねぇー。

正しいと思ってやってる事が結果自分の想像とは違ったなんて、きっと誰もが経験してるんだ。

うまくいかねぇな。。色々。。

俺はそんな事を思いながら眠りについたー。


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次の日ー。


朝から施設に誰かが来ていたー。

玄関先で何か話している。


「…先生。ありがとうございました。」


先生と呼ばれているのはウチのジジイだ。

お礼を言った大人のすぐ横に小さな子供もいた。

家族かな。。


「いいんだよ!役に立てて良かった。…こういう事はあまり考え過ぎず、気負いせず、楽にして下さい!人の負や弱みに寄ってきますから。それに子供は感受性が高くそういったものの影響を受けやすいですからね。まぁまた何かあったら気軽に来て下さい!」


ジジイ達は会話を終えたのか、来ていた家族は帰っていった。


「…フゥ~…、自分の子供達も見て霊媒の仕事もして、働き過ぎだな~俺。」


ジジイはこの施設で俺達を見ているの同時にお祓い?霊媒師とかいう仕事もしている。

昔からこの霊媒師の仕事は胡散臭くてしょうがない。


「悪霊なんているわけねぇだろジジイ。いつまでそんな見えない悪霊祓うなんてボランティアしてんだ。」


「…おう起きたのか光!いるぞ悪霊は!しかもほとんどが悪霊だ。タチが悪い。」


「見えなきゃ信じられねーな…」


「見えるものが全てじゃねーんだよ!だからお前はいつまでもそんなガキっぽいんだ(笑」


「…っっとに!うっせえな!!」


「どこ行くんだ?」


「ああ?職探しだよ!」


「そうか!まぁ頑張ってこい!俺にグチグチ言われたくなかったらガキじゃねぇってとこ見せてみろ!行動でな。男の子だろ!」


「それが鬱陶しいんだよ!!じゃーな!!」


毎日の日課のようなやり取り。

図星を突いてくるから余計に腹が立つ。

俺はイライラしながらも職探しに向かったー。


フワァ~~……。


「……ん?」


俺の横を一瞬虫が通ったー。


なんだ虫かよ。ったく。



「―――⁉⁉⁉」


俺はこの時まだ何も知らなかったー。


一瞬虫に気付いた俺を見てジジイが驚いていたことー。


俺が虫だと思って気にも止めなかったのが“悪霊”だってことー。



俺自身が“悪霊”を視れるようになったことー。




この時はまだ知る由もなかったんだ―。

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