序章 闘蟋
第一章 少女たちの受難
第二章 瑠璃色の甍
第三章 水なめらかにして凝脂を洗う
第四章 朝靄とともに
第五章 彼にとっての蟋蟀
第六章 胸に咲く珊瑚
終章 死して残すものは
13世紀、中国。300年続いた大宋帝国が滅びを迎えつつある時代に、武林に覇を唱えんとする稀代の女剣士“紅雪公主”は、自身が率いる“牙門”の剣士たちに、一本の剣を捜すよう命じていた。
いわくつきのその剣を持つ若者の名は林獅白――失われた記憶を捜すため、流浪の旅を続ける剣士である。
蒙古軍の馬蹄とどろく戦乱の大陸を、ひと振りの剣と瓢箪をたずさえ飄々と旅する獅伯の前に現れるのは、血煙まとった剣士か美しき悪女か――。