ペジテ市侵攻六時間後。
「どうやら、もう持ち出した後のようです」
「遅かったか 」
目の部分だけが透明になっているフルフェイスタイプのヘルメット越しのくぐもった声で会話がやり取りされている。照明の落ちた室内でヘルメットの横に取り付けられた小型探照灯の白い光線があちこち揺れている。埃が光線の中でだけちらちらと輝いた。部屋の真ん中にある丸い台座のような物から、いくつも散らばった細かいコードや、床に固定された堅そうなケーブルが部屋の壁へと延びている。壁際には金属製の筐体があり、たくさんの計器やらボタンやらレバーが付いている。殆どが壊されている。
「制御装置でしょうか」
「かもしれん」
ライトの光が計器の割れたガラスに反射している。
「隊長!死体です」
部屋の反対側からした声の方に二人は向かう。戦車二台が入れるくらいの広さがある。
「潜入させていた奴です」
死体の側で一人の隊員が片膝でかがんでいる。
死体の顔を照らして二人に見せる。
ペジテでの一般的な服装をした男の胸に穴があいている。
「最後にばれたのか」
隊長の側にいる男が死体の側にかがむ。
「これを見てください」
死体を見つけた隊員が壁際の死体を少しどかす。
「これは 」
隊長が思わずつぶやく。壁と床の隙間に小さなナイフが根本まで差し込まれている。
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