ペジテ市侵攻十時間後。
「でかいぞ!」
地下室が音をたてて震えた。出入口はずっと前に頑丈そうな隔壁が下りていた。
「ゆんゆんを囲め!」
ゆんゆんは台座に寝かされていた。
「上で何が起きているんだ 」
「ペジテからの攻撃を受けているんでしょうか?」
「町はもぬけの殻だったぞ」
「我々トルメキアを誘き寄せたうえで 」
「自分たちの町を犠牲にしてか⁉️ペジテの奴らは何処に行くというんだ」
「既に受け入れ先が決まっているのでしょうね」
「まさか 」
先ほどよりも近い衝撃がきた。足元も揺れた。
《我が名はゆんゆん。アークウィザードにして、中級魔法を操る者。紅魔族の長となる者 》
「む、ゆんゆん起きたか ?」
「いえ。寝言でしょうか?」
ゆんゆんは横になったままでいる。可愛らしい唇だけが小さく動いている。
「違う 。床を見ろ」
真っ白な床には薄く細かい模様が刻まれている。彫られた溝の中に黄色い光が溜まる。部屋の形に沿っていくつかの円が現れた。その中に幾何学的な紋様が描かれる。文字らしき物もある。
「なんだ 」
丸い部屋の壁にも光の筋が走り出す。床の光が増して、一気に照射してくる。
「うおっ 」
床の紋様が空中に浮き上がってきた。ワズルの隊員達を照らしながら上昇していく。紋様は天井に展開すると黄金色に輝き、消えた。
「なんっ、なんだ ?」
「ゆんゆんは?」
薄目になったゆんゆんが口を小さくぱくぱくさせている。意識はない。
「脈が弱いです!」
瞳孔反応を見ていた隊員が言った。
「くそっ 」
隊長が心臓マッサージに入ろうとゆんゆんの胸に手をかざしたとき、カプセルの蓋が動き出した。
「え 」
そのまま、最初見たときのようにゆんゆんはケースに保護された。
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