「もう終わったか?」
台座の陰に隠れていたゆんゆんは体をびくんと震わせる。ゆんゆんは、自分が服を着るまでこの部屋の扉の所で待機している男逹の方をそっとうかがう。
「終わったのかっ?」
再び問われた。男達の言葉は理解できた。
「はい ‥‥」
「おーい。もういいかーい」
ゆんゆんのささやくようなか細い声は、軍人達には届かない。
「こんな風に優しく言ってあげないとダメですよ、隊長」
「むむ 」
「だから家でも娘さんに無視されるんですよ」
「だまれ」
何度か自宅に招いた事もある副隊長の男の言葉に心を砕かれそうになるも、なんとか耐えた。
「ちょっと覗いてみますか」
言いつつ、既に背の高い隊員が隠れている壁から顔を出している。
「ばっ、おいっ」
「あ。おーい、もう良いのかい?」
隊長が引き止めようと肩を掴んだときには、もう声をかけ終わっている。返事は聞こえなかった。
「良いみたいすよ」
ゆんゆんが台座の陰から顔だけ出してうなずいている。
「“ゆんゆん”という名前で良いのかな?」
五人の厳つい男逹に囲まれている。ゆんゆんは首だけ振って肯定した。
「そう下着に名前が書いてあったから 」
信じられないという風にヘルメットをしたままの四人の部下が隊長の事を見ている。
ゆんゆんの顔がみるみる赤くなっていき、目に涙が浮かんでいく。
「あーらーら、泣ーかした」「俺が隊長の娘なら一生口きかんわ」「デリカシー」
部下逹が容赦なく責め立てる。
「なっ 」
少女の大きな瞳にできた涙粒が大きくなっていくのを見ておろおろする隊長。
「ごめんね、ゆんゆんさん。これでもこの人や俺らは君達の事を助け出そうとして 」
女性の扱いには何かと慣れている副隊長がフォローを入れていると、部屋の天井や壁が僅かに震えた。
「うわああああん 」
ゆんゆんが叫んで倒れた。
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