ザァァァァァァァァ……ッ
女が何かを言いかけた途端、急に世界が動き始めた。
宙に止まっていた雨粒はその勢いを取り戻し、重力の奔流の中に立ち戻る。
水飛沫を上げる波音。
バシャバシャと鳴り響く、世界の重力圏。
女は地面にしゃがみ込んだ。
そうして強く胸を押さえていた。
ゴホッ、ゴホッ…!
と咳き込みながら。
「大丈夫か?」
「…あ、ああ。なんとかな。力を使いすぎるとこうなるんや」
「力」って、…なんだよ
考えても埒が明かなかったので、女を背負って自転車まで戻った。
雨が次第に強くなり、体中が冷たい。
今起こったことがなんなのかを、冷静に処理できるだけの時間はなかった。
とにかく、家に帰って、飲むもの飲んで落ち着こう。
そう思いながら自転車を漕いだ。
帰りの道中に女は喋らなかった。
見た感じ、かなり疲弊している。
肩から息を吸ってた。
しゃがみ込んだ時には、100mを走り切った後みたいに疲れてた。
なんでそうなったのかはよくわからない。
とりあえず、がちでしんどそうだった。
自転車を漕いでいる途中でも、夢じゃないかと思う時が何度かあった。
でも、そうじゃないみたいだ。
家に着いたのは18時を過ぎた頃だった。
到着するなり女は服を脱ぎ、シャワーを浴びに行った。
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