研究所のエントランスを抜けて、中央フロアの横にある受付に、女は向かった。
「職員番号2862。地下フロアに用があると伝えて」
「おかえりなさい楓様。少々お待ちください」
…ん?
俺の聞き間違いか?
今、なんて言った?
なんか意味不明な言葉が聞こえた気が…
「どう、広いでしょ?」
「広いっていうか、デカすぎ。ってか今様付けされてなかった?」
「そうやけど?」
「知り合い?!」
「どう思う?」
受付の人は、ホテルのフロントスタッフみたいにキチッとしてる。
髪も、服も。
何人かいるけど、全員話しかけづらそう…
厳粛な匂いがプンプンした。
研究所ってこんなもん!?
なんかこう、思ってたのと違うな…
もっと“研究者!“みたいな感じの人が待ち構えてるのかと思った。
フォーマルスーツにネクタイって、式典かなんかでもやってんのか?
気味が悪いほど姿勢が正しいし、奇妙なほど静かだし。
周りを見渡すと、体育館が何個か入りそうなくらい広かった。
エスカレーターは3階まで繋がってる。
1階部分も2階部分もめちゃくちゃ高く、しきりがほとんどない。
天井の梁は傘の骨組みのように、アーチ状に張り巡らされてた。
外から見えてた建物の柱は、間近で見るとよりどっしりとしてて、重々しい。
ロビーの周りにはラウンドソファと、大理石の床。
木のアクセントが、所々にある。
外の光が差し込む大空間に、細部まで行き届いたきめ細やかなデザイン。
最近出来たのかな?
つい、そう思ってしまった。
それくらい綺麗な場所だったからだ。
何もかもが。
「おじさんは今アメリカにいるって?」
「うん」
「なんでそれを?」
「聞いたから」
「誰に?」
「誰でもええやろ」
おじさんとどういう関係なのか知らないが、ただの知り合いって感じじゃなさそうだった。
ここの人たちもそうだ。
どう考えても場違いな俺たちの顔を見て、平然としてる。
俺1人だけで来たら警備員を呼ばれるんじゃないか?
そんな雰囲気なのに…
「楓様、準備ができました」
「はいはい」
「こちら暗号化されたプロダクトキーです。使用期限は1時間となっていますので、ご注意ください」
「サンキュー」
サンキューってお前…
年下なんだから気を使えよ。
お姉さんに失礼だろ。
「どの口が言ってんの?」
「俺は普段から礼儀正しいけど?」
「…まあええわ。準備できたから行くで」
読み終わったら、ポイントを付けましょう!