雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第338話

公開日時: 2023年9月28日(木) 15:16
文字数:1,025






 …なんだ、これ…



 事故…?



 …俺が…?



 事故に遭う…?




 何度も見返した。



 信じられなかった。



 「運命」って…



 何が運命なんだ…?



 




 絶句してる俺を横目に、女は言った。




 「信じられんか?」


 「…当たり前やろ」


 「キーちゃんは知っとったんや。あんたが、事故に遭うこと。せやから、未来を変えようとした」


 「待て」


 「ん?」


 「ちゃんと説明せぇ」


 「昨日言うたやん」


 「こんなん聞いとらん」


 「言っとらんからな」


 「…はぁ?」

 

 「重要なんは、あんたが事故に遭うかどうかやない。変えないといけない「未来」があるっていうことや」



 …なんだそれ



 全然説明になってねんだけど?



 変えないといけない未来?



 “千冬を助ける”って、そういう話だっただろ?



 なんだよこれ…



 なんで、俺が事故に…?




 「隕石が落ちる前の世界で、たった一つの「時間」が存在した。その世界には、キーちゃんとあんたがおった。甲子園球場で、夢を追いかける2人が」


 「…で?」


 「その先の“未来”に、まだ、世界は辿り着けてない」


 「は?」


 「せやからキーちゃんは走るしかなかった。あんたに会うために、世界を変えようとした」


 「…意味わからんのやけど」


 「問題は、あんたがどうしたいかや」


 「俺が…?」


 「世界の真実なんてどうでもええ。そんなことより、あんたが今何をしたいか。それが、一番大切なことや」






 『人類のデジタル化』と題された、——文書。


 脳科学。


 情報。


 意味のわからない記号や数字。


 専門用語。




 俺が事故に遭う。


 そんなあり得ないことが、現実だとは思えなかった。


 神戸の地下にこんな施設があること自体不可解なのに、「亡くなった」とか…



 世界を変える。


 その意味を、理解できずにいる。


 女は言った。


 「時間」は一つしかないって。


 それが、具体的に何を意味してるのかがわからなかった。


 単純に考えようとすれば、するほど。




 女はどでかいモニターの前に座り、操作盤をカチャカチャ動かしていた。


 その様子を後ろから見ていると、あっちに戻る準備はできたか?と聞いてきた。




 「…あ、ああ、まあ、多分…」



 どっちかっていうとできてない。


 何を考えていいのかわかんなくて、固まったままだった。


 冗談としか思えなかった。


 衝撃的な内容すぎて。




 モニター上で指紋認証が要求され、女は手をかざす。


 コンピュータからは音声が流れた。


 「おかえりなさい。セカンドキッド」


 と。



 女性の声が聞こえたけど、多分AIの音声だろう。


 音程に変なリズムがあって、淡々としてる。


 声自体は人間っぽい。


 だけど妙に、トーンが冷めてた。


 不気味というか、なんというか。

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