雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第354話

公開日時: 2023年10月14日(土) 06:30
文字数:655


 トレーを持たされて、千冬はパンを吟味し始めた。


 買いたいもの決まってたんじゃないのか?


 何を悩んでる。



 「うーーむ」



 右手を顎に当てて、虫メガネを持った探偵のように悩んでる。


 ってか、揚げパンがねぇ!!


 さすがに朝が早すぎたか?


 でも、いつもだったら置いてるんだけどな。


 看板商品だし。



 「カレーパンがええかなぁ。それとも焼きそばパンか…」


 「はよせぇよ」


 「これにしよ!」



 散々悩んだ挙句手に取ったのは、チョココロネ。


 いや、カレーでも焼きそばでもないんかい!!


 しかも惣菜パンじゃなくて菓子パンかよ。


 急にどうした。



 「あんたは?」


 「俺は…」



 揚げパンがないんだったら別にいいかな…


 と思ったが、メロンパンがめちゃくちゃ美味しそうに見えた。


 一応買っとこ。


 あと、コーヒー牛乳も。



 「お会計660円になります」



 店を出て、国道2号沿いをずっと走った。


 青い店舗カラーの薬局に、CoCo壱番カレー。


 同じ背格好の店が、たくさん建ち並んでた。


 耳鼻科に不動産屋、カウンター席しかない割烹料理店、シャッターの閉まった靴屋。


 狭い駅前の通りを抜けた先に、薄い黄緑色の壁のビューティーサロンが、交差点の向こうに現れた。


 サロンの横には、シベリアンハスキーのイラストが描かれた動物病院の看板がある。


 西日が眩しい。


 淡い緑の壁と合わさって、鏡に光を当てたように色を弾いてる。


 少しだけ空が高くなって、線路が軋む音が聞こえた。


 電車だ。


 2号線沿いの線路が、三ノ宮に向かって伸びていた。


 サロンがある交差点の左手に見えた。


 背の低い高架下のトンネルと、堤防のようにせり上がった灰色の壁が。

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