電光掲示板の明かりが、各方面の発車時刻を表示しながら、下り線の電車が人をかき分けるようにやって来る。
ホームの線路を跨いで吹き抜けてくる、涼しい空気。
屋根の下には電灯が灯り、褐色に灼けた空の色が、少しずつ灰色に傾き始めていた。
目まぐるしい人の動き。
ホームの喧騒。
今、自分がどこにいるかを、頭の中で理解できないわけじゃない。
だけど見知らぬ女子高生に袖を掴まれ、こうして、わけもわからずに立ち止まっていると、自分が今何をしているか、一瞬わからなくなる。
彼女の目を見たんだ。
綺麗な二重まぶたの下に際立つ、透き通った眼差しを。
どんな顔をして、その「目」を見ればいいかもわからなかった。
立ち止まったまま、次にどう動けばいいのかも。
「はよ行くで」
行くって言ったって、…どこに?
俺はアイツを探さなくちゃいけない。
なんなら、一緒に探して欲しいくらいだった。
さっきの電車はもう行ってしまったし、ホームにもどこにも、見当たらないし…
引っ張られるように俺は階段を登った。
これからバッティングセンターに行くらしい。
最近の女子は、野球が好きなやつが多いのか?
名前も知らないその子の後ろを歩いていると、彼女のボストンバックに目がいった。
それは、見覚えのある物体が、ふと、視界の中に飛び込んできたからだ。
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