「私こそ聞きたいんやけど」
「…何?」
「ほんまに甲子園に行く気あるんか?」
「ある…けど」
「そんなやつが私に負けるかねぇ」
「あれは油断しとったから…!」
「はいはい」
俺がなんで甲子園を目指してんのか、女は知ったような口ぶりで話す。
奇妙だ。
非常識な行動もそうだが、言ってることがいちいち引っかかる。
普通のヤツじゃないことは一目瞭然だったが、それにも限度ってもんがだな…
いっそ噛み砕いて話したかった。
けど、全然噛み砕けないから困った。
むしろ口の中がモゴモゴする。
こんなにも話に脈絡がないと、パニックにならない方がおかしいわけで
「さっきも言うたけど、私は千冬の友達や」
「友達って、いつから?」
「だいぶ昔や。子供の頃かな」
「…ふーん」
「私がなんであんたに会いに来たかわかる?」
「知るわけないやろ」
「千冬を助けたい。そのためには、あんたの力が必要なんや」
女は真顔でそう話す。
耳を疑わずにはいられなかった。
千冬を助ける…?
その「意味」は、わからないわけじゃなかった。
でも、仮にそうだとしても、俺の考えが間違ってなかったとしても、いまいちピンとこない。
そりゃ助けられるなら助けたい。
どんな犠牲を払ってだって、アイツの目が覚めるのなら
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