「とにかく、1995年のあの日に、何もかも変わってしまったんや」
「あの日って…、地震のあった日??」
「そうや」
変わったって、…なにが?
俺は、あの日に何が起こったのかを知らない。
地震があって、街は崩壊したそうだ。
当時の写真が、ネットとか新聞に掲載されてる。
それを見て、何があったかを想像することしかできない。
震災で多くの人が亡くなった。
婆ちゃんもそうだ。
大ちゃんは震災で家を無くし、それが原因で両親は離婚した。
小学校の頃の友達も、近所のおばさん家も、あの日、大事な人を亡くした。
それを想像でしか、語ることができない。
あの日に街が変わったのは事実だろう。
もしも地震がなければ、まだ婆ちゃんは生きてた。
きっと今も元気で、くしゃくしゃの笑顔で隣にいて…
「あの日に私は生まれた。“運命”が変わったんや」
「…運…命…?」
「…私も困っとんや。どう説明しようかと思ってな」
頭をかきながら、困惑した表情を見せる。
…まったく
難しくしてるのはそっちなんだから、ちゃんとまとめてくれよ。
一応、信じようとは思ってんだから。
「この前も言うたけど、私が野球をやっとんのは…」
「…やっとんのは?」
ボールを握ったまま、女はこっちを見ていた。
なにか言いかけて、立ち止まったまま。
その様子を目で追いかけながら、俺は思い出していた。
あの時俺に会いに来て、“俺の力が必要だ”って、女は言ってた。
奇妙だった。
そんなこと、今まで面と向かって言われたことはなかったし。
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