残念そうな顔を浮かべる亮平を尻目に、坂道を下った。
接骨院の隣にある貼り紙だらけの塾。
神港学園高校の4階建ての校舎。
さぞかし大富豪が住んでるんだろうと思われるような日本庭園が、坂道を降っているときに見えた。
庭園の竹垣フェンスの下にぽっかりと空いた広い車庫が、おしゃれなガーデンライトの奥に建てられていた。
ここらへんは瓦式の家がわりとある。
山の斜面は神戸市内とは思えないほど緑に溢れてて、山肌に建つ背の高い鉄塔が、じっと蹲っているようにも見えた。
摩耶山の頂上にあるロープウェイの駅と、山道に点々と灯る小さな外灯。
草の生えた空き地。
落ち葉のぎっしりと埋まった砂利道。
赤いスーパーカブが置いてある防火水槽近くの家には、カラカラと音のする室外機が鳴っていた。
いい加減修理すればいいのにと思うが、家の人は気づいてるんだろうか?
カーブミラーの奥に立つ『摩耶ケーブル』と書かれた看板。
手書きのようなフォントで書かれた赤い文字の横には、矢印が。
坂道の上を指さすようにそれは向いていた。
地元すぎて行ったことがないんだけど、どんな景色なんだろうね?
友達が言うには紅葉の時期に行くのがおすすめらしいが、そういうのにあんま興味ないんだよね。
高いところの景色なんて、ビルの上からでも見えるし。
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