「こんなやり取り…した覚えない」
目を疑うしかなかった。
昨日まであったものがそこになかった。
「昨日」…?
いや、ついさっきまでだ。
さっきまで俺は、夏樹とラインしてた。
帰りが遅くなるかもしれないから、洗濯物を畳んで欲しくて…
そこにあるのは、身に覚えのないやり取りだけだ。
っていうか、「ちふゆ」——?
何度も見返した。
きっと、同姓同名なだけ。
ニックネームだって、たまたまな同じなだけで…
「なんや?」
彼女を見たんだ。
もう一度、まじまじと。
綺麗な二重瞼に、裏表のない表情。
柔らかい毛並みに、透き通った肌。
面影は、確かにある。
小学生の頃のアイツは、いつだって勝ち気な表情だった。
誰よりも負けず嫌いで、人前で弱音を吐くことなんて絶対なくて。
彼女の顔を見れば、わかる。
きっと、負けず嫌いなんだろうなって。
うまくは言えないが、なんとなくそう思えた。
凛とした佇まいや、ほんの些細な仕草の一端から。
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