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「…おい、亮平!亮平ってば!」
誰かが呼んでる声がする。
電車に乗って目を瞑り、漠然とした意識の底で、長い時間が過ぎた感覚があった。
女の声が遠のいて——
…確か、…それから
「亮平!」
ハッとなって目を開けた。
天井からぶらぶらと揺れている吊り革。
蛍光灯の白い光。
咄嗟に眩しいと思うと同時に、目を細めた。
朝起きてカーテンを開けた時のように、ほとんど反射的に。
「何ボーッとしとるん?」
…へ?
女はそこにいなかった。
目の前にいたのは、見慣れない制服を着た女子高生…だった。
「誰?!」
目の前にいたその子は、確かに俺の名前を呼んでいる。
だけど見覚えがなさすぎて戸惑ったんだ。
長いまつげに、すっきりと整ったアゴ。
センターに分けた前髪の奥で、凛々しい上目遣いの眼差しが、視線の真ん中に触れてくる。
「は?」
顔を強張らせ、ムッとこちらを睨んできた。
くっきりとした瞳の輪郭は、怖いくらいに鋭かった。
曖昧な線が1つもない。
そう感じてしまうほど、均整の取れたキメ細やかな顔立ちが、隙間もなくぶつかってきた。
俺はたじろいだ。
そうするより他になかったからだ。
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