ザッ…!
スライドしてくるスニーカーの先端が、地面の上を滑空する。
重心がマウンドの傾斜に沿って傾き、女の影が波のように揺らめいた。
ストレート
頭をよぎったのは、「まっすぐ」だ。
向かってくる体が、淀みのない直球を予感させた。
——“直球”?
だが俺は、身構えるよりも先に戸惑いを消し去ることができずにいた。
マウンドに立っているのは女だ。
どこの高校だか知らないセーラー服。
砂埃の向こうで、さらさらと髪が靡いている。
…俺は今、一体なにを目にしてる?
そう思う感情が、心の中で置いてけぼりを食らっていたからだ。
構えるのが一瞬遅かった。
その僅かな隙間を縫うように、踏み込んできた女の影の後ろで、勢いよく砂が飛び上がった。
バシィィッ…!!
…
……
……え?
視界に映ったのは、舞い上がったスカートと、風。
白いものが見えた。
——白い、何か。
人生で初めて目にしたものだ。
…いやいや、俺はなにを言ってる…?
一瞬のことで何が何だかわからなかった。
勢いよく砂が舞って、風が通り過ぎるかのように世界が動いた。
音のあとに残る、残像
その向こうに、非日常的なものが垣間見えた。
俺は確かに、今…
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