給食室の後ろを歩き、弓道場の中が見える裏庭の木陰から、様子を見てた。
裏庭からは海がよく見える。
風も心地いい。
ここでよく、健太とかツバサと昼飯を食ったりしてる。
日によってバラバラだが、弓道場に隣接した、蓮池のある小さい広間のこの場所は、お気に入りの1つだ。
すぐ横の南館には自販機があったり、レンジも湯沸かし機も完備されてる食堂が近かったり。
なんつっても風通しがいい。
フェンス越しに運ばれてくる海風はもちろん、ベンチのそばのハナミズキが、さやさやと葉を揺らしているのを聞くと。
JR神戸線の上り降りが、昼メシ時の午後の横でいつも線路を揺らしてた。
庭の芝生の上に寝転ぶ健太が、食いさしのサンドイッチを手に持ちながら、時々居眠りをこいたりも。
5限目に遅刻した時があったっけ?
あの時はわざと起こさなかったんだが、まあ面白かった。
いつまで寝てるだろうなって、ツバサと賭けたんだ。
6限目まで行くかと思ったが、実際は5限目の途中で帰ってきた。
かなり申し訳なさそうな顔つきで。
逆に、よく帰ってこれたなと思う(笑)
俺だったら授業が終わるまで待つ。
めちゃくちゃ入りにくいんもん。
健太の席は真ん中ぐらいだから、どうやったって目立つし。
遠目からだとよくわからないが、袴姿の部員が、的に向かって矢を撃ってるのが見えた。
鋭い音が道場内に響いてる。
的に矢が当たるたび、空気を刺すような音が響く。
弓の弦をギリギリまで引きつけ、目いっぱいまで力を込めた矢は、とんでもないスピードで飛んでいく。
松原さんが実際に撃つのも、何度か見たことがある。
その時はなんというか、圧倒されてしまった。
弓道をする人の所作もそうだし、雰囲気がマジでやばくて。
あの神妙な感じっていうか、絶対に話しかけられない雰囲気は、他の運動部には中々ない。
弓道を「運動部」って言っていいのかわかんないが、まあスポーツの一種だろ?
剣道はスポーツじゃないってじいちゃんが前に言ってた。
あくまで武道だからって。
その理屈だと、弓道も武道の一種なんかな?
「スポーツ」っていうのはちょっと違和感がある…かも?
——とにかく、それぐらい“緊張感がある”ってことだ。
あ、別にスポーツに緊張感が無いって話じゃなくて。
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