雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第226話

公開日時: 2023年6月12日(月) 00:25
更新日時: 2023年6月12日(月) 14:26
文字数:910


 給食室の後ろを歩き、弓道場の中が見える裏庭の木陰から、様子を見てた。


 裏庭からは海がよく見える。


 風も心地いい。


 ここでよく、健太とかツバサと昼飯を食ったりしてる。


 日によってバラバラだが、弓道場に隣接した、蓮池のある小さい広間のこの場所は、お気に入りの1つだ。


 すぐ横の南館には自販機があったり、レンジも湯沸かし機も完備されてる食堂が近かったり。


 なんつっても風通しがいい。


 フェンス越しに運ばれてくる海風はもちろん、ベンチのそばのハナミズキが、さやさやと葉を揺らしているのを聞くと。


 JR神戸線の上り降りが、昼メシ時の午後の横でいつも線路を揺らしてた。


 庭の芝生の上に寝転ぶ健太が、食いさしのサンドイッチを手に持ちながら、時々居眠りをこいたりも。


 5限目に遅刻した時があったっけ?


 あの時はわざと起こさなかったんだが、まあ面白かった。


 いつまで寝てるだろうなって、ツバサと賭けたんだ。


 6限目まで行くかと思ったが、実際は5限目の途中で帰ってきた。


 かなり申し訳なさそうな顔つきで。


 逆に、よく帰ってこれたなと思う(笑)


 俺だったら授業が終わるまで待つ。


 めちゃくちゃ入りにくいんもん。


 健太の席は真ん中ぐらいだから、どうやったって目立つし。




 遠目からだとよくわからないが、袴姿の部員が、的に向かって矢を撃ってるのが見えた。


 鋭い音が道場内に響いてる。


 的に矢が当たるたび、空気を刺すような音が響く。


 弓の弦をギリギリまで引きつけ、目いっぱいまで力を込めた矢は、とんでもないスピードで飛んでいく。


 松原さんが実際に撃つのも、何度か見たことがある。


 その時はなんというか、圧倒されてしまった。


 弓道をする人の所作もそうだし、雰囲気がマジでやばくて。


 あの神妙な感じっていうか、絶対に話しかけられない雰囲気は、他の運動部には中々ない。


 弓道を「運動部」って言っていいのかわかんないが、まあスポーツの一種だろ?


 剣道はスポーツじゃないってじいちゃんが前に言ってた。


 あくまで武道だからって。


 その理屈だと、弓道も武道の一種なんかな?


 「スポーツ」っていうのはちょっと違和感がある…かも?


 ——とにかく、それぐらい“緊張感がある”ってことだ。


 あ、別にスポーツに緊張感が無いって話じゃなくて。

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