雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第329話

公開日時: 2023年9月20日(水) 23:40
文字数:920



 クロノポリスっていう場所がなんなのか、ここがなんのために作られたのか、話を聞く限りじゃ、いまいち理解できなかった。



 “未来のために作られた場所”



 女はそう言う。


 隕石が落ちてくるのを見た。


 世界の形が変わった。


 そういう断片的な記憶の中に、この場所の秘密があると言う。


 信じられないわけじゃなかった。


 大げさすぎるこの場所も、バカみたいにでかい扉も。


 ここがショッピングモールなんかじゃないのはわかってる。


 ましてや、公共の場なんかでも。


 でも、やっぱり…



 世界が滅ぶ。


 それは何回考えても同じだ。


 未来で科学装置が発明されただの、世界の形が変わっただの、考えただけで頭が痛くなる。


 そんなの作り話か何かだろ?


 つい、そう思ってしまって…



 「着いたで。ここに資料がある」



 細い通路を渡った先に、パソコンルームのような部屋が現れた。


 たくさんのパソコンがある。


 埃ひとつない小綺麗なタイル床と、数式が並ぶホワイトボード。


 写真や資料が、机の上に散乱していた。


 書棚にはぶ厚いファイルが何冊もあった。


 部屋の角に立てかけられたコートハンガー。


 ガラス製のローテーブルに、使用されていない灰皿。


 冷蔵庫も置いてある。


 電子レンジも、テレビも。


 ここに誰かいたのか?


 私物らしきものが、チラホラとあった。


 読みかけの雑誌や、封の空いたタブレット。


 ただ、それにしたって小綺麗だな…


 全然散らかってない。


 冷蔵庫には水も入ってない。


 椅子は、新品同様だし。

 



 「つい最近まで、誰かがおったとは思う」


 「ふーん」


 「この部屋は量子コンピュータ室と繋がっとる。つっても、コントロール室とはまた別の場所やけど」


 「変なフィギュア。誰の机?これ」


 「さあ、知らん」


 「めちゃくちゃパソコンがあるけど、何に使うん?」


 「研究室の試験的なデータを管理しとる。そこに地図があるやろ?ここは「E」っていう区画や。メインコンピュータルームは北側にある。ガラスの向こうを見てみ?メインコンピュータを稼働させとる機械の一部が見えるから」



 部屋の壁際には窓があって、その向こうに、広々とした吹き抜けの空間が続いていた。


 向こうの空間が丸見えだった。


 それくらい、窓のスペースが広々としていた。


 一体何があるんだ…?


 そう思いながら覗き込むと、そこには異様な光景が。



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