クロノポリスっていう場所がなんなのか、ここがなんのために作られたのか、話を聞く限りじゃ、いまいち理解できなかった。
“未来のために作られた場所”
女はそう言う。
隕石が落ちてくるのを見た。
世界の形が変わった。
そういう断片的な記憶の中に、この場所の秘密があると言う。
信じられないわけじゃなかった。
大げさすぎるこの場所も、バカみたいにでかい扉も。
ここがショッピングモールなんかじゃないのはわかってる。
ましてや、公共の場なんかでも。
でも、やっぱり…
世界が滅ぶ。
それは何回考えても同じだ。
未来で科学装置が発明されただの、世界の形が変わっただの、考えただけで頭が痛くなる。
そんなの作り話か何かだろ?
つい、そう思ってしまって…
「着いたで。ここに資料がある」
細い通路を渡った先に、パソコンルームのような部屋が現れた。
たくさんのパソコンがある。
埃ひとつない小綺麗なタイル床と、数式が並ぶホワイトボード。
写真や資料が、机の上に散乱していた。
書棚にはぶ厚いファイルが何冊もあった。
部屋の角に立てかけられたコートハンガー。
ガラス製のローテーブルに、使用されていない灰皿。
冷蔵庫も置いてある。
電子レンジも、テレビも。
ここに誰かいたのか?
私物らしきものが、チラホラとあった。
読みかけの雑誌や、封の空いたタブレット。
ただ、それにしたって小綺麗だな…
全然散らかってない。
冷蔵庫には水も入ってない。
椅子は、新品同様だし。
「つい最近まで、誰かがおったとは思う」
「ふーん」
「この部屋は量子コンピュータ室と繋がっとる。つっても、コントロール室とはまた別の場所やけど」
「変なフィギュア。誰の机?これ」
「さあ、知らん」
「めちゃくちゃパソコンがあるけど、何に使うん?」
「研究室の試験的なデータを管理しとる。そこに地図があるやろ?ここは「E」っていう区画や。メインコンピュータルームは北側にある。ガラスの向こうを見てみ?メインコンピュータを稼働させとる機械の一部が見えるから」
部屋の壁際には窓があって、その向こうに、広々とした吹き抜けの空間が続いていた。
向こうの空間が丸見えだった。
それくらい、窓のスペースが広々としていた。
一体何があるんだ…?
そう思いながら覗き込むと、そこには異様な光景が。
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