「あんたの言う「千冬」ってのが誰のことか知らんが、私以外におるんか?!」
「…キミ以外?」
「その呼び方もなんやねん。気持ち悪い」
気持ち悪い??
彼女は相変わらず、呆れた表情を見せる。
その理由も、反応も、俺にはさっぱりだった。
「誰を探しとるんや?」
「誰」——?
そんなの決まってる。
わざわざ、言葉にしなくたって
「さっきから言うとる」
「それが意味わからんのや」
「なんで??」
「私以外に「千冬」がおるんか?」
「…そもそも、俺はキミのことを…」
初めて会うんだ。
以前に会ったことなんてない。
それは絶対、間違いない。
…でも、なんでだ?
千冬に似てると、…感じてしまうのは。
「…いや、あり得ん」
「何がや?」
「…キミが、千冬なわけない」
「ほんなら、私は誰やねん」
「…そんなん言われても」
知るわけないだろ。
“何者か”なんて。
電車の中で、声が聞こえた。
目を開いたら、その先にキミがいた。
突然、話しかけてきたよな?
…それに、さっきまで女といたんだ。
同じ高校に通ってる、女子高生——
「誰??」
「…知り合い」
「あんた彼女でもできたん??」
「そんなんやない!」
「ほんなら誰やねんそれ」
「知り合い以上友達未満…?」
「名前は?」
楓。
大坂楓。
当然のように、彼女は知らないと言った。
ひょっとしたら——
と思う自分がいた。
もしかしたら2人は知り合いなのかも、って。
だけどどうやら違うらしい。
…そりゃそうか
ってか、そんなことは今はどうでもよくて
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