雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第330話

公開日時: 2023年9月22日(金) 00:03
文字数:1,072


 高さも奥行きもある空間。


 人が通れそうなほど太いダクト。


 パソコンルームの小綺麗な床や壁が嘘みたいに、その“場所”は黒ずんでいた。


 汚いわけじゃない。


 ましてや、散らかっているわけでも。


 視線を傾けた先にあったのは、ゾッとするほどの冷たい質感だった。


 人の気配がない。


 それは見たままの印象だった。


 人の気配が無いのはさっきからだが、そういう意味じゃないんだ。


 感じたのは、そういうことじゃない。


 もっと深い、何か。


 穴の中を覗き込んだ時のような、海の底から持ち上がってくる藍色のような、不気味さ。


 それがあった。


 

 機械…?



 一瞬それがなんなのかは分からなかった。


 直径何十メートルもある。


 天井からぶら下がっている円盤型の金属と、配線。


 太い鉄骨と、奇妙な電子部品。



 巨大なドーナツ型の機械が、部屋の中央に設置されている。


 めちゃくちゃデカくて、床一面を覆っていた。


 吸い込まれそうになってしまった。


 なんだこの物体…


 リングの中央には箱型の大きい機械装置があり、外側には太い配管のような金属パイプが、円に沿って均等に取り付けられていた。


 パイプはそのまま壁の中に繋がっている。


 どこに繋がっているのかは知らないが、1本1本がリングの部品と接続されていて、接続部には青い表面が見えた。


 上から見ると、蜘蛛の巣のような形状になっていた。


 リングの中央だけでなく、つなぎ目にも箱型のボックスがあり、電子機器が剥き出しになっている。


 空間自体が回路みたいな作りになっていた。


 ゲーム機が壊れた時に中を開いて見たことがあるけど、あの感じ。


 作り自体は全然違うけど、パッと見それっぽいなって思った。


 人の血管のように張り巡らされているコード。


 複雑な機構が組み込まれた外観。


 それこそ、生き物のようにも見えた。


 細かい部品で埋め尽くされた、機械仕掛けの時計みたいに。



 パソコンルームと機械がある部屋は、かなりの高低差があった。


 ちょうど見下ろす形で、ドーナツ型の機械が見えた。


 今自分がいる所がいちばん低い場所かと思ったが、そうじゃないみたいだ。


 地下の構造がどうなってんのか知らないが、地図を見る限り、まだまだ下に階層がありそうだった。


 つい、自分が地面の中にいるっていうことを忘れてしまう。


 だってこの窓の向こうも、かなり下まで掘削されてる。


 下手したら3階くらいの高さがある。


 窓のすぐ外には簡易式の渡り通路があって、下まで行けるようになってた。


 向かい側の壁にも行けるみたいで、どうやら、ここと同じような部屋が奥に広がってるみたいだった。


 電気はついてなかった。


 下側のフロアにも同じく部屋が。


 通路も見えた。


 上からはよく見えないが。

 




 

 

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