雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第41話

公開日時: 2023年2月24日(金) 22:55
文字数:439


 冷房の効いた、静かな病室。


 机に立てかけられた、子供の頃の写真。


 神戸市中央区の街並みが、地上12階から見下ろせた。


 時々お見舞いに来る人たちの手紙が、机の上に置かれていて。



 「なにしとんや。はよこっち来い」



 部屋の隅でボーッとしていると、叱りつけるように女は言った。


 説教くさいなと思いながら近づく。


 カーテンの向こうで千冬の顔が見えた。



 「いつ以来や?」


 「は?」


 「ここに来たの」



 いつ以来だったっけ。


 正月が明けて、確か雪が降ってた。


 この病院を最後に訪れたのは。



 「この臆病者が」


 「臆病者…?誰が?」


 「あんたしかおらんやろ」



 そう言われた理由も、女の怒った表情も、全部わかる気がした。


 でも、だからなんだ?とも思った。


 ここに来たって彼女には会えない。


 それをわかってた。


 だから…



 「千冬は、あんたのことを待っとるんやで?」



 俺のことを、…待ってる?


 ハッ


 笑わせんなよ。


 アイツの意識は、もうここにはいないんだ。


 医者から聞いた。


 “もう目を覚ますことはありません”って。


 自分でも調べたんだ。


 千冬が今、どんな状態か。

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