「空を見てみ?」
「へ…?」
「空や空。星が綺麗やろ?」
んー…、まあ、そうだが。
展望台デッキの中のベンチに腰掛け、一緒に星を見ようと言ってくる。
生憎だけど、そんな気分じゃないんだ。
まだ頭がぼーっとする。
記憶が混同してるっつーか、なんつーか
「私の言った「話」を信じるか?」
「信じないとは言わんけど…」
「けど…?」
「色々わけわからんから、なんとも言えん」
「今はわからんでもええけど、とりあえず信じてくれる?」
「…まあ」
未来で起こったことがなんであれ、作り話なんかじゃないって、女は言う。
俺の知らない世界が、たくさんある。
そう言って、小さく微笑む。
「甲子園を目指す気は、ある?」
甲子園…ねぇ。
この前言われた時は何言ってんだと思ったが、今はちょっと状況が違う。
目指してもいいけど、それで何かが変わるのか…?
俺にはそうは思えないが
「もしかしたら何も変えられんかもしれん。辿り着きたいと思う場所に、辿り着けないかも…。あんたは何を信じる?」
「今の話のこと?」
「いいや。160キロのストレートも、甲子園も。自分にできることがあるとしたら、何を信じる?」
「…わからん」
「なんでもええんやで?例えば、テストで80点取るとか」
「何が言いたいねん」
「…別に。ただ、投げ出してほしくないと思ってな」
「野球をか?」
「野球でもなんでも。正直、あんたが野球を辞めようがどうしようが、そんなのはあんたの自由やと思っとる」
「この前と言っとること違くね…?」
「あんたはキーちゃんの何に憧れたんや?」
「…え、そりゃ…」
「野球をやってる姿か?それとも、性格?」
…違う。
そんなんじゃない。
間違ってないけど、そんな単純なことじゃない。
俺は、ただ…
「アイツが…」
「キーちゃんが?」
「…わからん。ただなんとなく、カッコいいと思ってた」
「なんとなく…ねぇ」
「お前だってそうやろ?好きな色のこと聞かれて、なんで好きか答えられるか?」
「答えられる」
「なんて言うんや?」
「…私の質問に答えぇや」
「答えたやん」
「中途半端な回答やなく」
と、言われましても
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