雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第305話

公開日時: 2023年8月28日(月) 22:39
文字数:845


 「空を見てみ?」


 「へ…?」


 「空や空。星が綺麗やろ?」



 んー…、まあ、そうだが。


 展望台デッキの中のベンチに腰掛け、一緒に星を見ようと言ってくる。


 生憎だけど、そんな気分じゃないんだ。


 まだ頭がぼーっとする。


 記憶が混同してるっつーか、なんつーか



 「私の言った「話」を信じるか?」


 「信じないとは言わんけど…」


 「けど…?」


 「色々わけわからんから、なんとも言えん」


 「今はわからんでもええけど、とりあえず信じてくれる?」


 「…まあ」



 未来で起こったことがなんであれ、作り話なんかじゃないって、女は言う。


 俺の知らない世界が、たくさんある。


 そう言って、小さく微笑む。



 「甲子園を目指す気は、ある?」



 甲子園…ねぇ。


 この前言われた時は何言ってんだと思ったが、今はちょっと状況が違う。


 目指してもいいけど、それで何かが変わるのか…?


 俺にはそうは思えないが



 「もしかしたら何も変えられんかもしれん。辿り着きたいと思う場所に、辿り着けないかも…。あんたは何を信じる?」


 「今の話のこと?」


 「いいや。160キロのストレートも、甲子園も。自分にできることがあるとしたら、何を信じる?」


 「…わからん」


 「なんでもええんやで?例えば、テストで80点取るとか」


 「何が言いたいねん」


 「…別に。ただ、投げ出してほしくないと思ってな」


 「野球をか?」


 「野球でもなんでも。正直、あんたが野球を辞めようがどうしようが、そんなのはあんたの自由やと思っとる」


 「この前と言っとること違くね…?」

 

 「あんたはキーちゃんの何に憧れたんや?」


 「…え、そりゃ…」


 「野球をやってる姿か?それとも、性格?」



 …違う。


 そんなんじゃない。


 間違ってないけど、そんな単純なことじゃない。


 俺は、ただ…



 「アイツが…」


 「キーちゃんが?」


 「…わからん。ただなんとなく、カッコいいと思ってた」


 「なんとなく…ねぇ」


 「お前だってそうやろ?好きな色のこと聞かれて、なんで好きか答えられるか?」


 「答えられる」

 

 「なんて言うんや?」


 「…私の質問に答えぇや」


 「答えたやん」


 「中途半端な回答やなく」



 と、言われましても



 

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