雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第203話

公開日時: 2023年5月20日(土) 07:57
文字数:550


 「こんなこと冗談で普通言わんやろ?冗談抜きで記憶喪失なんや。多分、昨日頭打ったせいで…」



 頭打ったの!?と、授業中にも関わらず彼女は大声を出した。


 一斉に他の生徒がこっちを向く。


 彼女は顔を赤らめた。


 それに釣られて俺も。


 千冬はびっくりしたようにまじまじこっちを見てたが、すぐに前を向いた。


 他の生地たちも同様だ。


 先生は先生で、一瞬こっちを睨んだようだったが、静かにしなさいというジェスチャーを交えながら、話を再開した。


 肩身を狭くしたように丸く縮こまった彼女は、俺の頭に視線を向けながら、小声で聞いてきた。


 「大丈夫なの?」と。




 “頭打った”っていうのはもちろん嘘だ。


 でも、記憶喪失のことを信じてもらうには、何か関連性があるものがないといけない。


 昨日それを学んだ。


 バカ正直に“目が覚めたら世界が変わってた”なんて、誰も信じない。


 だったらいっそ信憑性のある話に仕立て上げて、少しでも信じやすくした方がいい。


 ありきたりかもしれないが、頭を打ったって言えばなんとなく伝わるだろう。


 …あ、でも、傷とか無いから怪しいかな



 「体調悪いのも多分、そのせい」


 「何しとって頭打ったん??」


 「階段から落ちたんや」


 「階段!?」



 申し訳ないくらいに良いリアクションをする。


 心配してくれてるみたいだった。


 俺だったら絶対信じないけどな…


 こんな話。

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