99%の…、壁?
女は宙に浮いている雨粒を掬って、シャボン玉のように消えていく透明なその表層を、手のひらの上に乗せた。
雨。
——そして、曇り空。
見上げてみて?
と、女が呟いた。
だから空を見上げたんだ。
視線を傾けた先には、視界全部を覆い尽くす雲があった。
わずかに光を含んだ水雫が、数えきれないほどの破線となって降り注ぎ。
「あの日から、雨が止んどらん」
「あの「日」…、って?」
「隕石が降った日や」
「なんやねんその隕石っていうのは。冗談になっとらんで?」
「冗談やと思う?」
「…知らんけど」
「隕石」なんて、信じられるわけないだろ。
女は軽々しく「冗談じゃない」という。
だけどそれを真面目に聞けるほど、俺もバカじゃない。
女は波打ち際のギリギリまで歩いた。
バラバラに融解した海岸線沿いの波の形が、左右見渡す限りに伸びている。
海と砂浜。
その境界を結んでいるものは、「線」というには程遠いほどの粗雑な“カタチ”だ。
砂浜に乗り上げた波の大きさには、均一な“長さ”も高さもなく、1ミリにも満たない距離を挟んで、無造作な線と点を結んでいる。
押し寄せては引き、押し寄せては引き、その繰り返しの中に溶け込んでいった幾億もの水の流れが、波打ち際の不規則さを運んできていた。
「波の形には、一つとして同じものがない。
だから「海」には、“全てを運べるだけの力”がある。」
俺には女の言ってることがわからなかった。
だからなんだよって思う気持ちもあった。
何一つ整理できるものがないのに、海がどうとかと言われても…
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