雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第83話

公開日時: 2023年3月11日(土) 22:45
文字数:632


 99%の…、壁?


 女は宙に浮いている雨粒を掬って、シャボン玉のように消えていく透明なその表層を、手のひらの上に乗せた。


 雨。


 ——そして、曇り空。


 見上げてみて?


 と、女が呟いた。


 だから空を見上げたんだ。


 視線を傾けた先には、視界全部を覆い尽くす雲があった。


 わずかに光を含んだ水雫が、数えきれないほどの破線となって降り注ぎ。



 「あの日から、雨が止んどらん」


 「あの「日」…、って?」


 「隕石が降った日や」


 「なんやねんその隕石っていうのは。冗談になっとらんで?」


 「冗談やと思う?」


 「…知らんけど」



 「隕石」なんて、信じられるわけないだろ。


 女は軽々しく「冗談じゃない」という。


 だけどそれを真面目に聞けるほど、俺もバカじゃない。


 女は波打ち際のギリギリまで歩いた。


 バラバラに融解した海岸線沿いの波の形が、左右見渡す限りに伸びている。


 海と砂浜。


 その境界を結んでいるものは、「線」というには程遠いほどの粗雑な“カタチ”だ。


 砂浜に乗り上げた波の大きさには、均一な“長さ”も高さもなく、1ミリにも満たない距離を挟んで、無造作な線と点を結んでいる。


 押し寄せては引き、押し寄せては引き、その繰り返しの中に溶け込んでいった幾億もの水の流れが、波打ち際の不規則さを運んできていた。



 「波の形には、一つとして同じものがない。


 だから「海」には、“全てを運べるだけの力”がある。」



 俺には女の言ってることがわからなかった。


 だからなんだよって思う気持ちもあった。


 何一つ整理できるものがないのに、海がどうとかと言われても…

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート