カッコいいと思えた理由…
自分ではよくわかってる。
でも、それを言葉で表すことなんてできない。
俺にはできないことが、アイツの中にはあった。
千冬なら、一番遠い場所に行けると思った。
それを「なんでか」って聞かれても、うまく答えられない。
とにかく、すごいやつだって言うしか
「テキトーか」
「そんなんちゃうって」
「…まあええわ。私が言いたいんはな、“立ち止まんな”ってことや」
「は?」
「もう無理やって思うことが、時々あるやろ?」
「誰にだってあるやろ、そんなもん」
「キーちゃんならどうや?」
「千冬?」
「キーちゃんが諦めることがあると思うか?」
「…いや」
「そういう部分に憧れとったんやろ?どんなことにも、立ち向かっていく姿に」
…まあ、そうかも
でもそれが?
「別に。ただ、忘れてほしくないと思ってな」
どこか寂しそうなその顔を、うまく汲み取ることができない。
“夢を諦めてほしくない”
前にそう言われた時、女は同じような顔をしていた。
遠い空を見上げて、飾り気のない眼差しで、ただ、静かに俯いたような、——そんな声で。
「なんやねんそれ」
尋ねずにはいられなかった。
忘れるなとか諦めるなとか、俺にどうしろと?
言っとくけど、何かを諦めたつもりなんてないぞ?
千冬のことは、そりゃ…
「あんたはどうしたいんや?」
「…どうするって?」
「このまま何もせずに、ダラダラ夏を過ごすんか?」
「どういう意味や?それ」
女はすぐには答えなかった。
見上げたままの視線を下ろさずに、ただ、そっと口を閉じて。
「いつだって、もう間に合わんってことはないんや。その気になれば、どこにだって行ける」
「過ぎたことは変えられん。それは事実やろ?」
「仮にそうやとしても、前を向くしかない」
「前を向いてもしょうがないやろ」
「「今日」が最後になるとしても?」
今日が、…最後に?
「時間は待ってはくれん。今もそうや。じっとしとっても、何かを変えることはできん」
女の言いたいことは、なんとなくわかる気はした。
でも、だからこそ、否定したい気持ちもあった。
変えたくても、変えられないことだってあるんだ。
お前も言ってたじゃないか。
「せやから言うとるやろ。“時間には境界が無い”って」」
「はぁ??」
「あんたが足を動かせば、まだ、間に合う“場所”がある」
「どういう…」
「「空」はまだ死んどらん。まだ、未来を変えられるチャンスがあるんや。キーちゃんが、今も旅しとるように」
千冬が今どこにいるのか。
未来で何をしてたのか。
そんな言葉の先にある意味を、理解できずにいる。
境界が無いって言ったって、この世界の「今」はここにある。
どんなに時間が経とうが、どれだけ、——場所を変えようが
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