「…この半年間のこと、全部覚えてないってこと?」
「そういうこと」
「そんなことって…」
「まだそんなこと言っとんのかお前」
コウが横から話しかけてきた。
今いいところなんだからちょっかい出さないでくれる?
もしかしたら信じてもらえるかもしれないんだ。
「嘘はついとらん」
「ほー、おもろいやん」
「真面目に聞いとらんやろ?」
「当たり前やろ」
フゥ…
まあこれが普通。
声のトーンは冷たい。
清々しいくらいに。
一之瀬さんは、コウと違ってまだ聞く耳を持ってくれていた。
どこまで伝わってるのかはよくわからなかったが、授業が終わるまで俺たちは話し続けた。
2限目の化学が始まり、理科室で実験を行うということで俺たちは一階に移動した。
教科書は別にいらなかった。
枝付きのフラスコに、ロート台、ろ紙。
神戸高の校舎は案外古いところが目立つ。
外からしか見たことなかったから、もっと豪華な作りなのかと思ってた。
須磨高に比べたら全然広いんだが、所々に昭和感がある。
玄関周りは新しくなってた。
新しく建てられた別館もあった。
敷地は本当に広い。
グラウンドなんて芝生付きだ。
高校のグラウンドで芝生がついてるところなんて滅多にない。
そういうところを見ると、華やかだなって思う。
4階建の校舎と5階建の別館の間には、おしゃれな渡り廊下が設置されてた。
それを見てすげーって思った。
両サイドガラス張りで、しかもそれが3階部分にあるから、空中を歩いてるような気分になるっぽい。
須磨高じゃ絶対に味わえない。
良くも悪くも、オーソドックスな作りなんだよ。
ウチは。
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