雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第214話

公開日時: 2023年5月30日(火) 19:18
文字数:655



 一之瀬さんを後ろに乗せて、学校を出た。


 三ノ宮の街並みは見慣れてるが、どこか新鮮だった。


 カラフルな色のビル群も、三ノ宮中央通りの喧騒も、街角の小さなベーカリーも。


 高架下の色褪せたコンクリートと、頭上を走る電車の音。


 視線の先に触れる街の輪郭は、どこか、艶がかったように真新しい。


 唸るようなエンジン音が聞こえて、すれ違うヘッドライト。


 錆びたフェンス沿いを走って、いくつかの細い路地を通った。


 何度か、通ったことのある道。


 結構昔だっけ?


 市民球場に向かう時に、よく通ってた。


 水路の上に掛かった小さい橋掛けを飛ぶように渡って、住宅地をジグザグに走り。


 

 見慣れたとは言っても、普段はあんまり通らない。


 ここらへんをうろちょろするのは、最近だと、友達の家に行く時とかかな?


 つっても、最近はほとんど通ってない。


 そのせいかわからないが、久しぶりに通る街並みの一つ一つに、見たことがない景色があった。


 塗装の剥げたカーブミラーも、ラーメン屋だったはずの場所にある、小洒落た美容室も。



 街も、変わっていくもんだな…



 ペダルを漕いだ時に感じるゆったりとしたスピードが、柔らかい感触の中で、少しずつ速度を増していく。


 煙たいくらいに排気ガスが宙を舞い、交差点を横断する無数の影が、波のうねりのようにチラチラと飛び跳ねていた。


 夕日が降りてくる空の真下には、鮮やかな黄土色が、地面のいちばん低いところを焦がしている。


 いつもと何も変わらないようで、180度、何かが違う。


 そんな奇妙な感覚に囚われながら、目まぐるしく動く賑やかな三ノ宮の街中を、俺たちは走った。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート