「なんやその畏まった感じは…」
畏まってるつもりはない。
ちょっと緊張はしてるけど…
なんて呼べばいいのかもわからないから困った。
こういう時名札とかつけてくれてるといいんだけどな。
いちいち確認する手間が省けるから。
「亮平な、今ちょっと記憶喪失中なんや」
さっき、千冬と打ち合わせをした。
打ち合わせというか、相談というか。
“好きな人を教えるから、一旦俺の話を信じてくれ”
そういう「話」だったよな??
朝マックでマフィンも奢ってあげた。
千冬は「はいはい」と頷いてくれて、とりあえず話はまとまったはずだった。
そうでもしないと、知らない場所に来て苦労することになるそうだったし。
…それなのに、あろうことか“記憶喪失”!?
体調不良ってことでマスクも買ったんだ。
そういう設定にしておいて、今日は極力喋らないようにしようと思った。
知らない奴らと会話する勇気もなかったし、事情を説明できる気もしなかったし。
「…千冬!?」
驚きのあまり声が出た。
とんでもないことを言ってくれたもんだ。
おかげでさっきの男はこっちを見ている。
詳しく話を掘り下げたそうな目をして。
「…えっと、これはやな」
千冬に助けを求めたかったが、爆弾発言をした後に他の女子たちと会話を始めた。
おいおいおい
放置すな…
俺の席は後ろから2番目。
千冬の席は斜め前にある。
斜め前っつっても一個席を挟んでるから、気軽に話しかけられない。
俺を置いてさっさと自分の席につくあたり、打ち合わせと大分違った行動をしてる…
まだまだフォローして欲しいことがあるんだが?
この男の名前もそうだし、1限目はなんだってことも。
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