「亮平君、大丈夫?」
女子の声がした。
柔らかくてしなやかな声色。
俺の隣の席に、その子はいた。
ほんのりと茶色がかった髪に、端正な顔立ち。
若干ギャルっぽくもある。
なんというか、雰囲気が。
「…えっと」
この子はきっと、朝千冬が言ってた“真波”って子なんだろう。
垢抜けた印象はイメージと少し違ったが、パッと見優等生気質な雰囲気が、「ピュア」っていう表現から遠からずって感じだった。
“超絶”かどうかは、わからないけど。
「大丈夫、…やない」
「ええ!?」
その子に事情を説明しようとすると、男が“記憶喪失”についてを聞いてきた。
とは言っても、答えようがない。
そのまま伝えるべきか…?
それとも…
「てか、風邪でも引いたんか?」
「…ああ、うん」
体調不良という設定も、こうなったらあまり意味がない。
マスク外そうかな…
案外、うっとしいんだよな
「薬飲んだんか?」
「飲んだ」
「大丈夫なん?」
「…まあ」
容態はできるだけ悪いって伝えておいた方がいい、…よな?
あんまり話しかけてほしくないんだ。
理想を言えば、1日無言で過ごしたい。
幸先はあまり良くないけど。
誰かさんのせいで。
男の名前は、大槻コウと言った。
思い切って聞いてみたら、快く答えてくれた。
冗談まじりに記憶喪失だとそのまま伝えたら、ノリに乗ってくれた感じだった。
もうこの際、ノリで進めていこうか。
下手な設定を盛り込んでいくよりも。
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