「…うまっ!!!」
味に感動していると、2人が帰ってきた。
「お、食ってる食ってる」
呑気なおかんのことを睨むが、いい塩加減のおにぎりに思考が持っていかれる。
女はがっついている俺を見ては、クスクス笑っていた。
…呑気なヤツだ。
こちとらどうやって追い出そうか考え中だってのに。
「しっかり味わって食べんさいよ?せっかく作ってくれたんやから」
「おかんが作れや」
「私が作ったら文句言うやろ?あんた」
それはごもっともだが、それが母親の言う言葉かね?
どうせなら、文句を言われないような料理を作って欲しい。
不味いと言ったらゲンコツを飛ばしてくるくせに、少しも成長しようとしないもんな?
俺だけだぞ?
部活の弁当にコンビニおにぎり持っていくのは。
「ね、海行かない?」
朝メシを食べ終わる頃に、女はそう催促してきた。
海、か。
なんでわざわざ…
「キャッチボール、するで?」
「キャッチボールゥ??」
「せっかくいい天気なんやから」
確かにいい天気ではあるが、なんでお前なんかとしなきゃいけない。
しかも「海」で。
正直今日は一日中寝転んでいたいんだ。
せっかく部活も休んでるわけだし。
「ええから行くで!」
食器洗いはおかんがやるって言って、グローブとボールを持たされた。
女は俺の手を引っ張り、自転車の後部座席に座る。
…いや、行かないって
こんな朝っぱらから、何が嬉しくて行かなきゃいけないんだ。
つってももう9時だけど
そんなことはいいんだよ。
部屋に戻ろうとすると、階段前に立ちはだかった。
「千冬に会いに行くで」と、語尾を強めながら。
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