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「おっはー!」
結局学校に連れてこられた俺は、生まれて初めて、神戸高の門をくぐった。
まあ、わざわざこんな畏まった言い方をしなくても、基本的に“生まれて初めて”だろう。
転校でもしない限り、通う学校は1つなわけで。
自転車置き場から下駄箱に向かい、教室に向かった。
俺は「B組」らしい。
千冬とは同じクラスで、本館の2階にある。
「あのさ、ほんまに記憶にないんやが…」
状況は良くない。
来たのはいいが、どこになにがあるのかもよくわからん。
千冬は同級生と思われる子達と挨拶を交わしてる。
釣られるようにヒョコヒョコしていると、「何しとんねん」と怒られた。
礼儀正しく挨拶を交わしてるだけなんだけど?
「誰に頭下げとん?」
「…いやだって、初対面やし」
知ってる人はいない。
知り合いで神戸高に行ったやつは何人かいたが、友達ってほどでもない。
だから仮にいても、きっと同じような反応をするだろう。
俺自身、あんまり馴れ馴れしいのが好きじゃないから。
「恥ずかしいからやめてくれん?」
「なにを?」
「その感じ」
「…ああ」
千冬がなにを言いたいかはわかってる。
わかってるが、へんに合わせるつもりはなかった。
合わせたって、自分の首を絞めるだけだ。
俺は俺で、他の誰でもないんだ。
記憶にないものはない。
オーケー?
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