何かができればいいと思ってた。
自分にしかできないことを見つけて、何かにチャレンジしたかった。
些細なことだったんだ。
きっと。
明日雨が降る予感がして、窓の外を見る。
軽はずみな気持ちだったと思う。
特別な理由なんてなにもなくて、りんご味のキャンディーを手に取る。
じっとなんてしてられなかったんだ。
テレビ越しに映るワインドアップのモーションが、無性に輝いて見えた。
自分もいつかあんな球を投げたい。
——いつか、きっと
そう思うって、変なことかな?
わかんないんだ。
なんで自分が野球をやってるのか。
なんで、ピッチャーをしたいと思ったのか。
部活も終わって、校門前でみんなと別れた。
さや姉に買い出し頼まれてるんだよね。
2リットルのアイスコーヒーにみりんにサラダ油…
んん??
全部重たいもんばっかじゃないか!
自転車のカゴに入んなくない?
仮に入っても、絶対坂道上れないじゃん、これ…
しゃーない。
助っ人呼ぶか。
「亮平!」
ユニフォームに着替え、律儀に水道で手を洗ってる亮平の姿が見えた。
何してんだよ。
そういえばあんた、水筒は?
「水筒?」
「いっつも持ってきとるやん。無駄にデカいやつ」
「知らん」
「これからなんか用事あるん?」
「ないけど…」
「ほんなら一緒に帰るで!持ってもらいたいもんがあるんや」
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