「…ちょっ、なんやねん!」
間一髪のところでギリギリ防いだ。
けど、距離を取った俺を見るなり、ずいっと近づいてきては、壁際まで追い込んできた。
デコピンを発射する姿勢のまま、心無しか、目をときめかせてるようにも見えて。
「アホなこと言うとらんと、どっちに行くかって聞いとんやけど?」
「…へ?」
「せやから、バッティングセンターか、市民グラウンド!」
…バッティングセンター…?
聞き覚えがないどころか、意外すぎる発言にビビった。
市民グラウンドって言ったって、何しに行くんだ…?
まさかまた、“勝負”とか言われるんじゃないだろうな
俺はあの時のことを思い出していた。
女と出会った、学校の帰り道。
人生で初めて喧嘩を売られた日だ。
…まあ、喧嘩っていうか、ただの野球の勝負だったけど。
「…人違いじゃないですか?」
「ハァ?!」
俺はキミのことは知らない。
突然バッティングセンターとか言われても、なんて返答していいかもわからん。
俺はアイツを探してるんだ。
どこに行ったのかは知らないが。
「おもろいやん」
「なにが??」
「なんかのクイズ?」
「…いや、そんなつもりは」
「せやったらなんやねん」
「なんやねんと言われても…」
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