「なんでまだ着替えとらんのん?」
「…え?ああ」
着替えるっつったって、まだ時間に余裕はあるだろ。
食パンをトースターに入れて、冷蔵庫にある得体の知れない瓶を手に取った。
中には、赤い物体が。
多分、ジャムだ。
「なあ、これ何?」
ラベルも何もない。
少し大きめな瓶に敷き詰められた赤いジャム。
苺か?
市販のものじゃないみたいだが。
「母ちゃんが作ってくれたやつやろ」
「おかんが?」
苺は苺だが、山に自生してる野いちごを使ったジャムみたいだ。
そんなもん作ってくれた覚えないけどな。
匂いを嗅ぐと、ほんのりと甘い香りがした。
ジャムと言ったらブルーベリーだが、美味しいのか?…これ。
冒険はしたくないからマーマレードにした。
ツナチューブでもぶっかけようとも思ったけど、ちょっと気分じゃない。
焦げ目がついたパンを取り出し、スプーンで塗りたくる。
牛乳でも飲もうかな。
本当はカフェオレが飲みたいんだけど、素がない。
いつもだったら大量にストックしてるはずなのに。
「兄ちゃん彼女でもできたん?」
「できとらん!」
「ふーん。ほんなら誰に会いに行くねん」
だから、それは…
夏樹にくらいにならありのままを伝えていい気がするが、どうだろう。
…いや、バカにされるか。
昨日もそうだった。
内容が内容だけに、共感してくれるとは思えない。
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