「よーし、ほんならロンTでもするかぁ。内野陣は集まって」
「おーす!(一同)」
「あの…」
「ん?」
「土井先輩借りてもいいですか?」
「どしたん?」
「遠投したいなって思って」
「…ああ、別に構わんが、土井以外じゃダメなん?」
「誰でもいいですよ」
「ほんならノッチ、相手してやってくれん?」
「ノックはいいの?」
「個人ノック形式でやるから」
「ああ、はいはい」
ノッチこと野島先輩は、チームのエースだ。
私のライバルでもある。
先輩とはいえ、すぐにでもエースナンバーをつけたいからね。
差はめちゃくちゃ開いてるけど…
「千冬って遠投好きよな?」
「昔からのルーティンなんですよ」
「ルーティン??」
「あー、正確にはルーティンというか、リリースポイントを確かめるための…」
「ほう」
「よく体が開きがちになるんですよ。体っていうか上半身?ゆっくり全身を連動させたくて、遠投してるんです」
昔はよく投げ急いで、状態が前に突っ込んでしまうことがあった。
強く投げようとすればするほど、意識が腕のほうに集中してしまう。
そういう時にゆっくり体を使って、体全体でボールを遠くへ投げることを意識するようになった。
フォームが崩れないように、ボールは高く上げないこと。
高く投げようとすると左肩が上がる。
遠くへ投げるために高く投げようとしたんじゃ意味がない。
あくまでボールの軌道は低く、フォームはそのままで。
ゆっくり大きく体を使う中で、リリースの際に強くボールを弾くイメージ。
連動する動きの中で手首をうまく使えれば、自然とボールも強く投げれる。
強さと柔らかさを両立するって感じだろうか。
引けるだけ弓をゆっくり引いて、最後に指を離すみたいな?
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