「…勝負?」
「あそこにバットがあるやろ。3球勝負や」
ふざけてるのか…?
3球勝負?
日本語は通じている。
が、どうしてそうなったのかがよくわからない。
急に勝負と言われましてもですね
「どういうことなん?」
まだ受けると言っていないのに、女はマウンドをならし続けている。
やる気満々じゃねーか。
これはなんだ…?
新手のストリートバトルか?
斬新過ぎてついていけないんだが、この場合どうすればいい?
「単純な話や」
女はさっさと打席につけと催促してくる。
こちとら軽いパニック状態だっつーの。
「話」ってまさか…、これのことか?
冷静に考えようとしたが、無理だった。
マウンドをならし終えたのか、女は仁王立ちしたまま、肩を回していた。
「日本一のピッチャーになりたいんやろ?」
…
…は?
思わず目が点になった。
もちろん、正体不明の女に対する驚きと恐怖が、8割といったところだろう。
だが、それ以上に驚いたのは、その「女」が、知るはずもないことを知っていたからだ。
俺は聞き返した。
「今なんつった?」
「せやから、日本一のピッチャーになりたいんやろ?」
その「言葉」は、確かに耳の奥に届いた。
女の甲高い声色が、静かな住宅地の空気をかっさらうように響き、グラウンドに転がる落ち葉が揺れて。
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