「あんたは違う高校に行っとった」
「違う高校??」
「キーちゃんと一緒にな」
「千冬と!??」
「2人とも、神戸高校に通ってて…」
「神戸高校!?」
「んで、同じ野球部やったんや」
神戸高校って、…………ハァ!??
違う高校に…行ってたって、…そう言いたいのか?
「そうやで?」
…んなバカな
でも仮に、未来から来てるって話を信じるなら、あり得なくはないか…?
いやいやいや
神戸高校って、あの神戸高校だよな
公立じゃねーか。
え、俺公立に通ってんの?
「そんな驚くことか?」
「驚くやろ…。公立落ちてここに来たし」
「努力してなかったんちゃうん?」
「それなりに頑張りました」
「結局落ちとるやんけ」
ぐっ…
こう見えても、結構勉強したんだよ。
冬の間中。
ほんとは、もっと前からしとかなきゃいけなかったんだろうが、夏までは野球漬けだったんだ。
成績だってそこまで悪くはなかった。
中の下…ぐらいだったけど。
「キーちゃんは天才少女やったけどな?」
千冬が高校に行ってたって、気さくに話す。
それをどう受け止めればいいのかわからなかった。
そんな未来があるなら、それほど幸せなことはないんだろうと思う。
だけど同時に、そんな未来あるわけないって、思えた。
別に変な意味じゃなく、単純に。
女はそんな俺の感情など振り払うように、未来のことを話す。
まるで、“昔のことを語る”時のような、感慨深さで。
「あんたとキーちゃんは、ライバルやったんや」
「ライバル?」
「そ、ライバル」
「…ライバルって、どういう風に?」
「キーちゃんの球を打つ。それがあんたの夢やった」
「…アイツの球を?」
「“ライバル”ってのはそういう意味や。この世界と同じく、あんたはキーちゃんに誘われて、野球を始めた」
「…で?」
「同じチームで、甲子園出場を目指して…。お互いに負けたくないって思っとった。お互い、“世界でいちばん速い”時間を探してた」
「…いちばん速い…時間?」
「なんて言うんやろな。うまくは言えんけど、きっと、そういうことやったと思う」
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