「驚いた?」
…驚いた?
…そりゃ、驚くに決まってるだろう。
こんなのはあり得ない…
…一体、なにが
「未来から来たって言うたやろ?」
「…未来?」
「何百年も先の話や。私は、今よりもずっと遠い先の世界から来た」
意味がわからなかった。
…遠い先の、世界?
何百年…?
停止した先の世界で聞こえきたその言葉の歯切れたちは、混乱を加速させるには十分すぎるほどだった。
女は俺の手を引っ張り、線路の向こう側を目指す。
ほとんど何も考えられずに、異常な光景を目の当たりにしてた。
線路を抜け、建物の間を通り抜けていくと、だだっ広い水平線と、ひらけた空が見えた。
押し寄せる波は白い泡を放出しながら停止し、空は、すでに回転していない。
波の音さえも聞こえなかった。
雲の流れさえも失われていた。
全てが息をしていないと感じられるほど、そこにはモノクロの静寂が流れていた。
…いや、そこにはもう、“静寂”さえもないのかもしれない。
限りなく速くて、限りなく遅い。
なんだかそんな境界に不時着する得体の知れない輪郭が、垣間見えた。
それをどう表現すればいいかもわからなかった。
…ただ、女は、そんな状況とは裏腹に柔らかい表情を浮かべていた。
「怖がらなくていい」
やさしく手を握り、そう言ってくる。
俺はただ言葉を追いかけたんだ。
それ以外にどうしようもなかったから。
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